【各種事業】 この時期の生涯学習関連事業は情報化、高齢化、国際化という社会の変化に対応したあり方が求められた。その中で、成人一般を対象として社会教育課で行われてきた「成人セミナー」は、平成一〇年度から「生涯学習センター講座」として生涯学習センターに移管されて現在も継続している。
また、区内の大学の教員が講師を務めるとともに、大学施設を開放して区民に学習の場を提供する「成人大学」は、昭和六〇年から従来の慶應義塾大学、明治学院大学に加えて芝浦工業大学も加わり「区民大学」として実施している。現在ではさらに多くの大学と連携している。
高齢者向けには昭和四七年に高齢者教室(「寿大学」)が開設され、その後、平成一〇年度からは生涯学習センターの事業となり、同一三年度からは「さくらだ学校」と名称を変更した。
女性を対象とする「婦人学級」は、昭和五九年度から「婦人学校」に、平成三年度からは「レディスセミナー」に名称を変更し、同九年度まで開講した。また、「女性リーダー養成講座」(平成元年度は「婦人リーダー養成講座」)を平成元年度から八年度まで実施した。
その他、平成一〇年度からは区内在住・在勤・在学者のグループの申請に応じて、区の職員を講師として派遣する「出前講座」を、同一四年度からは区民のボランティア講師が学習機会を提供する「まなび屋」を開講している。
【障害者対象事業】 障害者を対象とした事業としては、障害者在宅学習資料として啓発紙「はばたき」が一九七〇年代後半以降から平成一一年度まで年数回発行された。視覚障害者などには音声データも合わせて配布された。また、区内の障害者団体が行う学習活動に対して、講師謝礼や教材費などを補助する障害者学習活動促進事業が行われている。
昭和五七年度からは、一五歳以上の知的障害者を対象に「いちょう学級」が開設されている。当初は「青年セミナー」の一学級であったが「いちょう学級」以外の青年セミナーは現在は廃止されている。現在は、土曜または日曜を中心に月一回程度、スポーツ活動や調理実習、地域との交流や宿泊研修などの活動を行っている。平成一八年度以降は障害者福祉課が所管し、同二五年度からは民間への事業委託が行われている。
【学校施設の開放】 生涯学習体系への移行に合わせて、生涯学習の機会を提供するため、学校施設の開放が推進された。平成二年三月に港区立学校施設等使用条例が制定され、小・中学校の校庭一般開放、屋内プールの開放が進められた。平成三年度に二九五一件であった学校施設の開放件数は、同三〇年度には一万
五一四八件と大幅に増加している。
【児童の居場所づくり事業】 全国的に共働き家庭の増加に伴い、小学生が放課後を過ごす場所の確保が社会的な課題となってきた。港区では、平成一六年九月に国の委託事業を活用し、放課後児童育成事業「放課GO→」を青山小学校で開始した。平成一八年度には芝小学校と南山小学校に学童クラブ(「放課GO→」と異なり預かり時間が長いが、保護者の就労状況などの審査がある)の機能を併せて一体的運営を始めた。なお、その後も条件の整った放課GO→に学童クラブを付置し、平成二一年度に「放課GO→クラブ」とした。平成一九年度からはすべての「放課GO→」が民間委託となっている。その後、「放課GO→クラブ」は区内の全地域で設置が進み、令和元年度(二〇一九年度)には二校に「放課GO→」、一五校に「放課GO→クラブ」が置かれている。令和元年度現在、「放課GO→」は生涯学習スポーツ振興課、「放課GO→クラブ」は子ども家庭課・各地区総合支所管理課が所管している。
【平和事業】 昭和六〇年八月に「港区平和都市宣言」が行われたことなどを受けて、同六一年度から区の社会教育事業として平和関連事業が行われている。平和に関する講演会や映画会、写真展の実施や、区内在住・在勤の青年を広島・長崎および海外都市に派遣する平和青年団派遣事業を行っている。平成一七年度までは社会教育課(改組後は生涯学習推進課)が事業を担当した後、同一八年度からは総務部人権・男女平等参画担当が実施している。
【区立図書館の整備・充実】 一九八〇年代半ばから、区は「図書館の整備」「図書館サービス機能の充実」「視聴覚事業の充実」を柱として図書館事業を進めた。平成七年三月に高輪図書館が高輪コミュニティーぷらざ内に改築移転し、同八年七月に港南図書館新築開設、同九年三月に赤坂図書館が暫定施設移転した。また、平成九年九月からは区立図書館の日曜日一斉開館が実施され、同一七年四月からは祝日一斉開館が実施に移された。なお、昭和五四年に開設されたみなと図書館は、区の中央図書館的な機能を有する施設としてその役割を果たしてきた。
オンライン化、インターネットの活用が進んだのもこの時期である。平成四年六月に区立図書館にオンライン・ネットワーク・システムが導入され、利用者が自分で資料の所在を検索できるようになった。また、平成一六年六月に港区立図書館のホームページが開設され、インターネット上で所蔵資料が検索・予約(予約は翌一七年一月から)可能となった。 (村上祐介)