14-4コラム 教員の働き方改革と区の取組

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二〇〇〇年代後半頃から、国の調査などを通じて教員の長時間労働の実態が明らかとなってきた。そこでは中学校教員の過半数が過労死ラインである月八〇時間以上の時間外勤務を行っているなど厳しい現状にあることが問題となった。
港区の教職員も、平日一週間当たり五五時間、一日平均一一時間以上学校・ 幼稚園に在校(園)しており、長時間労働の解消など働き方の改善が課題であった。区は平成三〇年度(二〇一八年度)から令和二年度(二〇二〇年度)までの三年間を対象に「港区教職員の働き方改革実施計画」を策定し、(1) 週当たりの在校時間が六〇時間を超える(月当たりの時間外労働がおおむね八〇時間となる状態)教員をゼロにする、(2) 教職員の「幼稚園・学校内でこれまでより働き方改革が組織的・計画的に推進されていると感じる」割合を70%以上にする(平成三〇年七月時点30・3%)、(3)教職員の「仕事と生活(趣味・家庭生活・余暇など)のバランスがとれていると感じる」割合を70%以上にする(平成三〇年七月時点45・9%)ことを掲げた。また、その実現に向けて、定時退勤日や部活動の休養日などの目標を設定する、夏休みに最低二週間は閉校(園)期間を設定する、職員室に留守番電話装置を導入する、スクール・サポート・スタッフや部活動指導員を拡充するなどの具体的な取組を進めている。
一方で、文部科学省は平成一八年と二八年の二回にわたり教員勤務実態調査を実施したが、各地域・学校での様々な取組にもかかわらず平成二八年はむしろ勤務時間が増加傾向にあることがわかり、自治体レベルでの取組だけでは限界があることも明らかになってきた。教員の労働時間増加の原因になっていると指摘される給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法、給与月額の4%に当たる教職調整額を一律に支払う代わりに、時間外勤務手当を支給しないしくみ)の見直しなど、国レベルでの制度改革が不可欠となっている。
教員の働き方改革は業務の改善・見直しと同時に、人員の確保・増員と、教員以外の専門スタッフによる支援が求められる。これに関して、平成一九年度から全国で初めて港区が実施した取組が学校法律相談である。港法曹会に業務を委託し、校長・園長が担当弁護士に直接相談することができるとともに、学校と保護者らとの面談への弁護士の同席を実施している。こうした仕組みはいわゆるスクール・ロイヤーとして近年全国で徐々に広がっているが、港区の取組はその先駆けとなった例である。  (村上祐介)