二〇〇〇年代以降、三節で述べた様々な生涯学習事業が引き続き行われるとともに、総合型地域スポーツ・文化クラブ、学校支援地域本部(現在の地域学校協働本部)の設置など新しい事業も展開されている。大学・NPO・民間企業との連携がより重視されるようになってきていることが特徴である。
【学習情報の提供】 区は平成元年度から『港区生涯学習ガイドブック』を発行し、講座・イベントなどの生涯学習情報を提供してきた。合わせて、平成二〇年度に「みなと教育ネット」のホームページを開設し、同二四年三月には港区ホームページにその内容が集約された。
冊子体としての『港区生涯学習ガイドブック』は平成二四年度で終了し、翌年度からはリング式ファイルによる生涯学習情報一覧「まなメニュー」を区内の生涯学習関係施設に配付・公開している。
また、平成三〇年度からの「港区生涯学習推進計画」では、学習情報の電子化、インターネットでの公開、SNSの活用などの仕組みを構築することを目指している。
【大学・NPO・民間企業との連携】 近年の区の生涯学習関連施策では、大学・NPO・民間企業との連携が活発となっている。区と大学との連携は、平成一八年にテンプル大学ジャパンキャンパス、同二〇年に慶應義塾大学、同二一年に芝浦工業大学とそれぞれ連携協力に関する協定が結ばれ、様々な事業が展開されている。平成三〇年度現在は、このほかに東京海洋大学、明治学院大学、都立産業技術大学院大学、東京大学医科学研究所、北里大学、東海大学、東洋英和女学院大学大学院、戸板女子短期大学とも連携協定を締結している。
企業との連携では、平成一六年に生涯学習推進課が「企業とのパートナーシップ事業」を開始した。平成三〇年三月に策定された「港区生涯学習推進計画」では、企業・NPOとの連携を強化することが打ち出され、同年度には「企業・NPO等連携事業」として、多様な講座を展開することとした。
【総合型地域スポーツ・文化クラブ】 総合型地域スポーツクラブは、幅広い世代が様々なレベルに応じて多様な種目を楽しむことを目的とした、地域住民が自主的・主体的に運営するスポーツクラブである。平成七年から国で取組が進められており、港区では同一九年一一月に六本木地域に港区総合型地域スポーツ・文化クラブ六本木(スポーカル六本木)を設立し、中学校区域を拠点として学校施設を活用して様々な種目が行われている。その後、平成二五年七月に高松地域、令和元年九月には青山地域に同様のクラブが設立されている。
【地域学校協働活動推進事業】 学校と地域の連携を推進する仕組みの一つとして、国は平成二〇年度から「学校支援地域本部事業」を開始した。区では社会教育委員の会議や教育委員会事務局での検討を経て、平成二六年度から「港区学校支援地域本部事業」を開始した。当初は学校支援コーディネーター三人を生涯学習推進課(現在は生涯学習スポーツ振興課)に配置して各学校への派遣を行い、外部講師派遣に協力可能な企業やNPO団体の情報収集、職場体験の受け入れなどに当たった。平成二九年度からは各幼稚園、小・中学校に地域コーディネーターを配置し、「学校支援地域本部事業運営協議会」でその運営に関する協議を行っている。令和元年度からは、事業名を「地域学校協働活動推進事業」に改称し、同年度現在、区内幼稚園、小・中学校一八校に地域学校協働本部を設置している。
【郷土歴史館の整備】 港郷土資料館は昭和五七年四月に三田図書館内に開設されたが、収集資料の増加や資料の保存環境の改善など、さらなる整備が必要となったため、昭和六二年の港区基本計画で新郷土資料館の建設が盛り込まれた。建設地の問題などで実現には非常に時間を要したが、平成二三年に白金台四丁目の旧公衆衛生院の建物を保存して活用することが決定し、同三〇年四月に港区立郷土歴史館等複合施設「ゆかしの杜」が開館し、郷土資料館は郷土歴史館と名称を変え同年一一月に開館した。誰もが歴史や文化をとおして港区を知り、探求し、交流できる拠点として、展示室のほか、原始・古代から現代に至る港区五地区の姿や日常などを映像をとおして紹介するガイダンスルーム、縄文土器やクジラの骨格標本など本物の資料に触ったり、自然の音を聞いたりしながら港区の自然、歴史、文化を学べるコミュニケーションルーム、ギャラリー、図書室が設けられている。また、ミュージアムショップ、カフェなども併設されている。
(村上祐介)