大使館等との連携

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幕末から各国の公使館(のちの大使館)が置かれ、現在でも港区には多くの外国公館(大使館・総領事館・領事館・代表部など、外交使節がその拠点として使用する施設)が所在する。江戸時代末期、最初の外国公使館が善福寺(アメリカ)・東禅寺(イギリス)・済海寺(フランス)・西応寺(オランダ)に置かれたことがその始まりといわれている。また明治維新後、旧大名家から没収した大名屋敷の跡地を「外国公館」用地として各国に提供した経緯があり、大名屋敷が多かった港区、とりわけ麻布地区に集まった。現在も多くの外国公館が港区に所在する。大使館(八六)・総領事館(四)代表部(一)のほか、名誉総領事館(二)・名誉領事館(三)・国際機関(三)を有し、全体の過半数を越え、その数は他の自治体を圧倒している(巻末表15-2-1-1)。
このほか、大使公邸や大使館宿舎など外交団に関連する施設も多くは港区に所在しており、これらは港区における国籍や文化の多様性を高めている。大使館等では自国の文化や伝統を伝える区民向けのイベントなどを実施しており、国際交流の端緒となっている。港区では平成二二年(二〇一〇)三月に区が区内の大使館等が主催する事業に協力することにより、大使館等と地域の区民との国際交流の促進に寄与することを目的として「港区大使館等事業協力実施要綱」ならびに「港区大使館等事業協力事務取扱要領」を定めた。これは、原則として区内に所在する大使館等を対象とし、区民センター等の会場を大使館等に提供すること、大使館等による広報活動を支援すること、大使館等と地域の区民との国際交流を促進することなどを内容とするものである。
港区ワールドフェスティバルの一環で実施している「港区大使館等周遊スタンプラリー」は、これらの大使館等を観光資源として活用した代表例といえる。この取組は区内に所在する大使館等の協力を得て実施されるもので、区役所等で配布される「パスポート」を受け取り、参加者は大使館等を訪問し、大使館等の様子や各国の文化に触れる機会を得る。
また、区内に立地する大使館等と区の連携を促進することによる、外国人に対する効果的な情報提供を行うことを目的に平成二五年度から大使館等実務者連携会議を開催している。令和元年度は六月に第一回が開催され三〇の大使館等から三九人が出席し、港区の国際化推進施策の取組状況についての説明のほか、AED講習などが行われた(図15-2-1-1)。同年一二月には第二回が開催され、取組状況のほか、各課からの行政情報の提供、大使館等からの共有事項のほか、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックに向けてのお願いが議題となっていた。このように、区役所と大使館等による定期的な会合も行われている。

図 15-2-1-1 令和元年度第 1 回大使館等実務者連携会議


また、区民が港区の国際色に触れ、多様な文化を身近に感じる機会をつくるため、港区内に立地する大使館等と協力し、海外の文化、伝統等を紹介する国際文化紹介展示を平成二四年度から行っている(表15-2-1-2)。令和二年度はアイスランド共和国、アフガニスタン・イスラム共和国、ウクライナ、エリトリア国、オーストラリア、キューバ共和国、ドイツ、ニカラグア共和国、ハンガリー、フィリピン、フランス、ホンジュラス共和国、マダガスカル共和国、モルディブ共和国、リトアニア共和国、レソト王国の一六か国を対象にした「世界のお祭り―世界一六か国のお祭りを写真で紹介―」を実施し、一〇月五日〜一八日に東京ミッドタウン、一〇月二〇日〜一一月九日にJR品川駅中央改札内で、一一月一〇日〜二五日にキューバ共和国の「Viva Cuba」を港区役所で実施した。このほか、表に示すように、例年様々な国・地域を対象とした展示を行っている。

表 15-2-1-2① 各国大使館での国際文化紹介展示(平成28年度〜令和2年度)

表 15-2-1-2② 各国大使館での国際文化紹介展示(平成28年度〜令和2年度)

図 15-2-1-2 令和2年度国際文化紹介展示チラシ

図 15-2-1-3 令和2年度国際文化紹介展示(JR品川駅中央改札内)


また、港区に立地する大使館等が主催する音楽会、展覧会等、区民との文化交流事業について、港区が開催を支援しており、令和元年度は表15-2-1-3の九大使館のイベントがその対象となり、うち一つを除いた八つが開催された。
このほか、例年五月に実施されているアメリカ大使館宿舎で開催されるフリーマーケットなど、各在外公館等もそれぞれ独自に市民が参加できるイベントを開催しており、多様な文化に触れる機会が多い。各国との友好協会が開催する行事なども含めると、国際交流の幅はより広まっているといえる。

表 15-2-1-3 令和元年度大使館等事業協力実施支援イベント


このような事業展開により、区民の国際理解や多文化共生社会における日本人と外国人の相互理解の促進などに役立っているといえる。
またアジア・太平洋戦争後は進駐軍が駐屯したことから、二三区内唯一の在日米軍基地として六本木には星条旗新聞社・宿舎・ヘリポート等を有する赤坂プレスセンター、広尾には会議および宿泊施設の機能を持つニューサンノー米軍センターが存在している(二章コラム参照)。