外国人学校の集積

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港区は外国の学校教育制度における教育機関を多く有する点も特徴的である。日本における高等学校もしくは義務教育の課程に相当する教育施設としては、日本インターナショナルスクール協議会に加盟する聖心インターナショナルスクール・西町インターナショナルスクール・東京インターナショナルスクール・モンテッソーリスクールオブ東京の四校のほか、未加盟・非加盟の教育施設もある。また、令和元年まではテンプル大学ジャパンキャンパスがあり、大学院・大学・短期大学の課程を有していた。これは外国人居住率の高さを背景としており、日本の学校教育制度ではないものの在住外国人を中心とした進学先の選択肢の一つとなっている。
聖心インターナショナルスクールは明治四一年(一九〇八)に来日したキリスト教修道女会の四人の修道女によって設立された財団法人聖心女子学院により開講された語学校を起源とし、同四三年に外国人部、昭和一八年(一九四三)には聖心女子学院芙蓉寮と名称の変遷を経て、同二三年から現校名となった。
西町インターナショナルスクールは昭和二四年に第四代・第六代総理大臣松方正義の孫である松方種子により設立され、松方家の敷地内で西町スクールとして開校、同三〇年には学校法人として認可され、同四一年に現校名となった。
東京インターナショナルスクールは坪谷・ニュウエル・郁子により平成六年のプリスクール開設を経て同九年に目黒区内に開校、同一三年に港区に移転し、同二九年に学校法人として認可された。
モンテッソーリスクールオブ東京は幼児教育施設を起源とし、小学校に相当する課程として平成一五年に開校した、日本インターナショナルスクール協議会加盟校の中では最も新しい学校である。
もちろん、上記に挙げた以外にも外国の教育制度による教育施設はあるが、そのすべてを挙げることは困難である。それは、外国公館等内に所在する場合など、その把握が困難であることが理由として挙げられる。在日ロシア大使館附属学校(ロシア連邦共和国)は都内の小学校等との交流があること、アラブイスラーム学院(サウジアラビア)は在日サウジアラビア大使館付属文化センターであり、かつイマーム・ムハンマド・イブン・サウード・イスラーム大学附属東京分校でもある。ここに挙げた以外の学校は、それぞれの国では教育機関としての認定を受けられるが日本語での情報がないものなどがありえるが、これらについては割愛せざるを得ない。多様性が高いことは、一方でそれらの把握を困難にする一例といえよう。
このように、多くの外国公館を有すること、多くの在住外国人を有し、滞在期間も様々であることから、一律に日本の学校教育制度に適応させることが妥当ではなく、外国の教育制度による教育の需要が高いという点は指摘されよう。特に日本語話者以外の児童・生徒は一時的に日本の学校教育を受けることが適当であるとは必ずしもいえない。これらの教育施設に通う児童・生徒やその保護者は必ずしも港区の住民とは限らないが、通勤ないし通学に便利な地域に居住していることは確かである。その点では広い意味でのステークホルダーであるともいえ、国際都市が持つ多様性を確保するという点で重要な要素の一つとなっている。
ただし、このようにそれぞれの母国語での教育が進むことは、一方で日常生活での困難を生む可能性もある。港区はもちろんのこと、その他の国・自治体や生活に必要なサービスの多くは日本語での情報提供が主体であり、このように外国語での教育を受けた人々の増加は前提ではないともいえる。しかし、港区では早くから情報の多言語化や「やさしい日本語」で発信するなど、他の自治体に先行して多くの取組を行ってきた。これらを踏まえ、国際都市としての役割としてはこのような人々にどのようなサービスを提供するかが新たな課題となっている。