東京都のオリンピック・パラリンピック準備局は、平成二九年(二〇一七)に「二〇二〇年に向けた東京都の取組―大会後のレガシーを見据えて」と題した冊子を発行した。この報告書の冒頭には「一九六四年の東京大会は、新幹線や首都高速道路など、高度経済成長を牽引するレガシーを生み出しました。東京二〇二〇大会では、都市としての成熟を示すレガシーを残していくことが求められています」と記されている。表15-3-5-1は同冊子で掲げられている主要なレガシーをまとめたものである。これら見渡した上で、ハード面のレガシーが強調される一九六四年大会と比較すると、冊子冒頭の言にもあるとおり、最も大きな特徴として「ソフト」面のレガシーが前面に出てきていることがわかる。
次に、港区の掲げるレガシーを見てみよう。
港区は、令和四年(二〇二二)に「東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会港区の記録」と題した報告書を発行した。表15-3-5-2はその中で掲げられている区のレガシーをまとめたものである。こちらも都の計画と同様にソフト面を中心に掲げられていることがわかる。
表15-3-5-1 東京都のレガシー計画
東京都オリンピック・パラリンピック準備局「二〇二〇年に向けた東京都の取組」(2017)から作成
表15-3-5-2 港区のレガシー計画
港区企画経営部「東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会 港区の記録」(2022)から作成
これらのレガシー計画は、はたして社会にとってプラスのものになるのか、それともマイナスのものになるのか。その評価は、本章の冒頭で述べたように今後の歴史が証明することになるだろう。ただ、現時点でこれらレガシー計画をどのように捉えるべきか、また現代に生きる我々が何を意識すべきか、若干の想像を交えながらまとめてみたい。