都市化が顕著にすすんだ港区で、人為的な影響をまったく受けていない自然状態の場所はほぼ無い。生物のみならず地形もまた同様で、おそらく海底を除けば、ほとんどの土地が何らかの改変を受けているとみて差し支えない。港区では、少なくとも江戸時代以降、「都市型自然環境」が形成され、その過程で生物はさまざまな影響を受けてきた。「第Ⅲ章 港区の生物」では、都市型自然環境の形成史と成立の要件が語られている。
平成20年(2008)4月から翌年の6月にかけて、港区内の生物現況調査が行われた。その結果によれば2,171種の生物が確認されており、こうした大都市でも、多様な種が生息し、生育していることが理解できる。さらにいうと、過去に遡れば6,500種余りの生物が確認されるのであり、そのうちの多くが港区から消滅したのも知ることができる。
生物は、人びとが五感でとらえられる最も身近な自然といえるかも知れない。第Ⅲ章からは、そうした生物の先史時代から今日に至る遷移や現状が容易に理解できる。