1)台地の分布

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 港区(1979)の台地は北から麹町(こうじまち)台地(千代田区)、赤坂台地、青山台地、麻布台地、飯倉(いいぐら)台地、愛宕山(あたごやま)、三田(みた)段丘、高輪台地、白金台地、などと名付けられている(図1-ⅱ-1)。これらは間に入り込む谷の地形で区分されるので、厳密な境界線というものは示せない場合が多いが、おおよそ、両側から谷が入り、台地が一番狭くくびれているあたりで区分する。

図1-ⅱ-1────地形分類図(港区 1979)に加筆


 麹町台地は溜池の谷の左岸(東側)で、千代田区麹町や永田町(ながたちょう)が含まれ、都立日比谷高校や山王日枝神社、首相官邸などがある。
 赤坂台地は、迎賓館赤坂離宮や赤坂御用地、青山通り、青山霊園、乃木坂(のぎざか)付近の高台を指し、青山中学校や赤坂中学校などがある。標高は30~32mに達する。赤坂台地の西側は、古川の上流にあたる渋谷川の谷である。北と東は溜池の谷とその支谷、南側は古川(渋谷川)の支谷である笄(こうがい)川の谷(外苑西通り沿い)が入り込んでいる。
 青山台地は、渋谷川の谷と笄川の谷に挟まれた部分である。青山通りや六本木通り、青南小学校、日赤医療センター(渋谷区)などがあり、標高は30~35mとなる。笄川とは別に、南青山7丁目付近から南へ向かい、広尾1丁目付近で渋谷川に合流するいもり川の谷が、青山台地の南部にみられる。
 麻布台地は、上述の赤坂台地南東部のくびれにあたる六本木交差点付近から南へ延びる部分で、六本木ヒルズや麻布税務署、有栖川宮(ありすがわのみや)記念公園などがある。西側は笄川の谷、東側と南側は古川の谷である。標高は30m以上で、六本木ヒルズや都立六本木高校のあたりの高台はもとは武家屋敷だったところである。
 飯倉台地は、六本木交差点から東へ飯倉交差点方向に伸び、北側は溜池の谷とその支谷、南側は古川の谷である。麻布小学校やロシア大使館、東京タワー等がある。
 愛宕山は東京湾岸の低地と国道1号線との間にそびえ、愛宕神社やNHK放送博物館などがある。愛宕神社の石段上の三角点の標高は25.7mである。「山」とよばれるのは、海岸側から見上げるとかつてはそのように見えたからだが、現在はビルの間に埋もれてしまっている。けれども中央部の「愛宕隧道(ずいどう)」(トンネル)(写真1-ⅱ-1)を通ると、今でもその高さがわかる。

写真1-ⅱ-1────愛宕山をくぐる愛宕隧道


 愛宕山の南方の増上寺西側と芝公園の丸山古墳のある標高15~20m程度の高まりは、人工改変が著しいものの、台地より一段低い段丘とされる(港区 1979)。
 三田段丘は古川橋付近から一之橋付近にかけての古川の谷と東京湾岸低地に囲まれた部分で、オーストラリア大使館やイタリア大使館、都立三田高校、慶應義塾大学などが立地する半島状の台地を指す。標高は16~18mで、周辺の他の台地と比べるとやや低い。国道1号線が三田2丁目から三田4丁目にかけて、慶應義塾大学正門前でこの三田段丘を横切っている(写真1-ⅱ-2)。

写真1-ⅱ-2────三田段丘を横切る国道1号(三田2丁目)


 高輪台地は三田段丘の南方から品川の御殿山(ごてんやま)北側までJR線の西側に続く台地で、東側は東京湾岸低地に面している。標高は25~28m前後である。伊皿子貝塚遺跡や高輪皇族邸(上皇邸)、明治学院大学、高輪病院などがある。北側は古川の谷から八芳園(はっぽうえん)付近の谷が入り、南側は目黒川の谷からNTT関東病院のある谷が入り、白金台地と区切られる。
 白金台地は高輪台地の西側にあり、標高は約30mである。港区立郷土歴史館(ゆかしの杜)、東京大学医科学研究所、聖心女子大学、国立科学博物館附属自然教育園などがある。