2)港区内の上総層群

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 港区内では地表付近で上総層群をみることはほとんどできないが、ボーリングにより確認可能である。港区内では上総層群の最深部は確認されていないが港区中心部から南東へ約8km離れた中央防波堤内側埋立地(図2-ⅱ-1;東京都江東区青海2丁目地先、江東地殻活動観測井)では標高-1,670mに上総層群最深部があることが報告されている(鈴木1996,2002)。上総層群より下位は標高-2,572mまでが三浦層群(シルト岩、砂岩、礫岩)(図2-ⅱ-2)からなり、その下位には中生代ジュラ紀の秩父帯(砂岩、泥岩、チャート)が伏在する。秩父帯は関東山地に分布する地質であり、プレートの沈み込みにより海溝付近に形成された付加体とよばれる地質構造である。
 浅い部分の上総層群はボーリングにより区内3地点で確認された。それらは有栖川宮記念公園(南麻布5丁目)、都立青山公園(六本木7丁目、南青山1丁目)、檜町公園(赤坂9丁目)で掘削されたボーリング(掘削深度は約100~125m)によるものであり、淀橋台ないしはそれを削る斜面上(図2-ⅱ-3、2-ⅱ-4)において昭和62年~平成元年(1987~1989)に東京都土木技術研究所(現在の東京都土木技術支援・人材育成センター)により実施された。地下の様子を示す地質柱状図を図2-ⅱ-5に示す。以下詳細に述べるように、地下の地質は基本的に地表から盛土、関東ローム層(檜町公園では欠損)、段丘構成層となる東京層、下総層群相当層、上総層群相当層である。

図2-ⅱ-3────武蔵野台地東部の地形区分図
(区分は貝塚(1979,1992)、久保(1988)、貝塚ほか(2000)、松田(2013)などに基づく)

図2-ⅱ-4────港区周辺の地形とボーリング位置(地形を示す陰影図は国土地理院の地理院地図による)


 上総層群相当層は少なくとも、有栖川宮記念公園では深度28.40m(標高-0.81m)以深、都立青山公園では深度22.11m(標高-1.98m)以深、檜町公園では深度19.10m(標高-1.8m)以深の部分であり、おもに海成のシルト層ないしは砂層からなり、ところによりテフラ層(火山灰層や軽石層)や貝殻片を含んでいる(東京都土木技術研究所 1996,中山ほか 1997)。上総層群相当層は東京23区地下では下位から北多摩層、東久留米層、舎人層、江戸川層と区分されており、港区地下で検出された北多摩層、東久留米層はそれぞれやや固結したシルト層、砂層を主体とする(東京都土木技術研究所 1996,中山ほか 1997)。檜町公園で掘削されたコアのみで北多摩層(図2-ⅱ-5のF層)と東久留米層(同E層)の双方が確認され(中山ほか 1997)、その他の2地点では北多摩層のみが認められるとされている(中山ほか 1991)。