3)港区地下の上総層群北多摩層

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 檜町公園で掘削されたコアの北多摩層(図2-ⅱ-5のF層)では堆積時の古環境を復元する上で重要な情報となる微化石(石灰質ナンノ、花粉、珪藻、有孔虫)や古地磁気の分析がなされ(中山ほか 1997)、都立青山公園の北多摩層では石灰質ナンノと古地磁気のデータが示されている(中山ほか 1991)。
 中山ほか(1997)によれば檜町公園の深度67.90m以深で4帯に有孔虫群集が区分され、沿岸浅海域有孔虫群集と陸棚中部から上部の有孔虫群集が交互に現れることが明らかにされている。このうち沿岸浅海域有孔虫群集では深度約102~122mと深度約67~92mの帯が識別され暖流の影響下にあった。一方の陸棚中部から上部の有孔虫群集では深度約122m以深の帯と深度約92~102mの帯が識別され寒流の影響下にあったことが示唆されている。年代については深度67.90m以深から石灰質ナンノ化石が産出するとしており、67.90~116.87mの間の5試料はSato and Kameo(1996)の対比基準面8と10の間で、120万年前から144万年前の間の更新世初期に対比されるとした。さらに深度63.30~63.70mでの正磁極帯を除くと全て逆帯磁を示し、石灰質ナンノ化石の結果と古地磁気測定結果から本地点の上総層群(北多摩層と東久留米層)は松山逆磁極帯に相当し、深度63.30~63.70mの正磁極帯はコボマウンテンの可能性が高いとしている。これらに基づき、北多摩層上限の年代を約113万年前とした。
 この他北多摩層中には少なくとも有栖川宮記念公園、都立青山公園、檜町公園でそれぞれ5枚のテフラ層が観察されている(表1)。これらについてはまだ詳細不明であり、今後の研究課題となる。

表1────有栖川宮記念公園、都立青山公園、檜町公園におけるボーリングから得られたテフラの諸特性
(オリジナル・データをもとに作成)