図3-ⅰ-1────日本列島の成立(日本地質学会(2008)『日本地方地質誌3関東地方』による図(同書の図1.4.25)を簡略化)
関東平野西側の関東山地は西南日本弧の東端に位置するとされている。港区の地下を構成する地質もそれに所属すると考えられる。なぜならば本章2節で述べたように、港区中心部から南東へ約8km離れた江東区青海2丁目(江東地殻活動観測井)では、標高-2,572mより下位には中生代ジュラ紀の秩父帯(砂岩、泥岩、チャート)が伏在し(鈴木 1996,2002)、これが関東山地を構成する地質の続きと考えられるからである。この秩父帯は、かつてユーラシア大陸の一部であり、当時の陸弧沖合での、プレートの沈み込みにより海溝付近に形成された付加体とよばれる地質構造である。
ところで港区を含めた日本列島の土台がユーラシア大陸から切り離され、水平方向に移動すると考えると、地域の歴史を過去にさかのぼる場合、地域をどのように定義するか悩ましい。地球上での位置、すなわち緯度経度で示される港区という見方ができる一方で、港区地下の土台となる地質が大陸から切り離されたことを考慮して、かつての港区はユーラシア大陸に位置し現在の場所に移動してきたという見方もできる。