1)日本列島の成立と中新世の日本海開裂

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 日本列島の土台はかつてユーラシア大陸に属していた。当時、日本海は存在しておらず、大陸東縁で陸弧であったと考えられ、その東の海には現在同様、日本海溝において太平洋プレートが沈み込んでいた(図3-ⅰ-1)。新生代中新世の2,000万年前以前はこのような状態であったがその後、1,700万年前頃を中心に大陸東部が裂けはじめ、日本列島の土台が太平洋側に移動し大陸との間に日本海が成立したという、日本海開裂とよばれる地学的に重要なイベントがおきた(日本地質学会 2008)(図2-ⅱ-2)。日本列島は関東・中部地方付近を境に東北日本弧と西南日本弧に区分されているが、日本海が拡大する際に東北日本弧は反時計回りに、西南日本弧は時計回りに回転(日本海観音開きモデルとよばれている)したことが知られており、1,500万年前には現在の位置にまで移動してきた。

図3-ⅰ-1────日本列島の成立(日本地質学会(2008)『日本地方地質誌3関東地方』による図(同書の図1.4.25)を簡略化)


 関東平野西側の関東山地は西南日本弧の東端に位置するとされている。港区の地下を構成する地質もそれに所属すると考えられる。なぜならば本章2節で述べたように、港区中心部から南東へ約8km離れた江東区青海2丁目(江東地殻活動観測井)では、標高-2,572mより下位には中生代ジュラ紀の秩父帯(砂岩、泥岩、チャート)が伏在し(鈴木 1996,2002)、これが関東山地を構成する地質の続きと考えられるからである。この秩父帯は、かつてユーラシア大陸の一部であり、当時の陸弧沖合での、プレートの沈み込みにより海溝付近に形成された付加体とよばれる地質構造である。
 ところで港区を含めた日本列島の土台がユーラシア大陸から切り離され、水平方向に移動すると考えると、地域の歴史を過去にさかのぼる場合、地域をどのように定義するか悩ましい。地球上での位置、すなわち緯度経度で示される港区という見方ができる一方で、港区地下の土台となる地質が大陸から切り離されたことを考慮して、かつての港区はユーラシア大陸に位置し現在の場所に移動してきたという見方もできる。