1)関東平野の成立

30 ~ 30 / 111ページ
 100万年前頃より、それまで太平洋に向かい深海が広がっていた上総トラフの地形を変化させる重要な地殻変動が生じた。房総半島から九十九里浜、さらには鹿島灘にいたる関東東部にかけての地域を軸とする隆起運動で、鹿島―房総隆起帯(貝塚 1987)とよばれる地域が隆起を開始した。その理由はフィリピン海プレートの進行方向が以前にくらべてやや西寄りになったことと関連づけられている(貝塚 1984)。この変動は上総トラフの東方への出口を塞ぐものであり、関東平野の中心部が相対的に低下する地殻変動の様式に移りかわった。この傾向は基本的に現在も継続中であり関東造盆地運動とよばれている。
 ところで第四紀(約260万年前以降)は氷期と間氷期が繰り返された時代であり、特に78万年前以降の中期更新世を迎えるとその寒暖の差が大きくなり、同時に氷期・間氷期間で海面高度の差が大きくなり、その振幅は百数十mに及ぶようになった(図2-ⅱ-2)。一方で堆積作用と周辺域の地殻変動により、上総トラフの浅海化がすすんでおり、大きく海面が低下した氷期において一時的に陸域となった時期が現れた。陸上地形としての関東平野の芽生えである。この頃堆積したのが上総層群を覆う下総層群である。下総層群の大半は浅海域に堆積した海成層であるが、海面低下期に陸域に堆積した陸成層や陸上侵食による不整合面を伴う。またその層厚や分布は関東造盆地運動に規制されており、関東平野中心部の東京湾北東部で厚く、400mを越える。東京東部から埼玉県東部にかけては100m以上の層厚があるものの武蔵野台地南西部に向かい急激に層厚が小さくなり、港区付近では100m以下となる(図2-ⅱ-2)。