1)氷河性海面変動とは?

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 東京湾に面する港区の地形や地質は、地球の歴史の中で繰り返された気候変化に伴う海と陸の環境変化に大きく影響されて形成されてきた。このような地球規模の環境変化として、「氷河性海面変動」とその影響について説明する。
 南極大陸やグリーンランドは現在も大陸氷床(ひょうしょう)という巨大な氷河に覆われている(氷河とは降り積もった雪が圧縮されて氷となり、重力で流動するものを指す)。仮にこれらがすべてとけて水になったとすると、海水の量が増えるため、海面の高さ(海水準)は60m以上高くなると計算できる。逆に、大陸を覆う氷床が現在よりも拡大して、北アメリカ大陸やユーラシア大陸などにも大きな氷床があったらどうなるであろうか。
 地球上の水の量は一定でたえず循環しているため、陸地に降った雪がとどまって氷河が増えると、とけて海に流れ込む水の量が減り、海面が低くなる。約2万年前(日本列島は旧石器時代)はそのようなことが実際に起こっており、北アメリカ大陸では現在のカナダの大部分が、ヨーロッパではスカンジナビア半島などの現在の北欧諸国が厚い氷床に覆われ、海水準は世界的に100m以上も低くなっていた(図3-ⅲ-1)。

図3-ⅲ-1────北半球における最終氷期の氷床の分布(田渕編 1985)


 海面の高さが100m以上低くなるとどうなるだろうか。東京湾や瀬戸内海は深さが数十m以内で浅いため、干上がって陸地になってしまい、本州と四国と九州はつながって一つの島になった(図3-ⅲ-2)。本州と北海道の間の津軽海峡はもう少し深いので、完全に陸地にはならなかったらしい。しかし、北海道とサハリン、サハリンと大陸はつながり、マンモスなどの動物が渡ってくることができた。動物だけではなく、現在よりも寒い気候のため、植物や森林の様子も異なり、関東平野は北方系の針葉樹林が広がっていた。その後、現在までに北アメリカやスカンジナビアの氷床はとけてしまい、その分の海面が現在の高さまで上昇した。これを氷河性海面(海水準)変動とよぶ。

図3-ⅲ-2────氷期の日本列島(米倉ほか編 2001)


 このような氷河時代の寒冷期(氷期(ひょうき))と温暖期(間氷期(かんぴょうき))は約10万年周期でくり返し、それに伴い氷床の拡大と縮小、約100mにおよぶ海水準変動、さらに生態系の変化などが地球規模で繰り返したことが明らかにされている(図3-ⅲ-3)。

図3-ⅲ-3────気候・海面変化を示すグラフ(高橋・小泉編 2008)