2)降水の頻度と強度

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 次に降水の頻度と強度について取り上げる。私たちが屋外で任意の時刻に活動することを想定し、ある1日において港区内で時間降水量X mm以上の降水に遭遇する確率に相当する指標を考える。ここでは港区の降水量9観測点が空間的に均等に分布していると仮定し、各地点の毎時降水量をもとにX mm以上の降水時間数を求め、その9地点の合計を算出する。すなわち、9地点のそれぞれに24個(時間)ある1時間降水量216個(=9×24)のうち、何個X mm以上の降水が観測されたかを集計する。9地点のすべてで24時間にわたってX mm以上の降水が観測された場合、いつでもどこにいても降水に遭遇するので、その日におけるX mm以上の降水遭遇率を100%とする。1地点で1時間のみであれば0.46%(=1/216×100%)となる。これを図2-ⅱ-4aと同様に平滑化して半旬ごとに集計したものが図2-ⅲ-1a~dであり、ここでは5日間の積算値ではなく1日あたりの降水遭遇率としている。

図2-ⅲ-1────港区における1日あたりの時間降水量X mm以上の降水遭遇率(%)の季節変化(a~d)と
時刻別の降水遭遇率(%)(e~h)

時間降水量X は、(a,e)1mm以上、(b,f)10mm以上、(c,g)20mm以上、および(d,h)50mm以上である。港区の資料により作成。


 
 図2-ⅲ-1では時間降水量1mm以上(a)、10mm以上(b)、20mm以上(c)および50mm以上(d)の4段階について降水遭遇率の季節変化を示した。これによれば、1mm以上(a)では、半旬降水量(図2-ⅱ-4a)と季節変化の形が類似している。しかし、時間降水量の大きい強い降水になるにつれて、梅雨季と秋雨・台風季を含む夏季や、先述の菜種梅雨、走り梅雨、山茶花梅雨の時期に限定されるようになる。特に8月後半に強雨の遭遇率が高くなり、50mm以上では9月前半までの時期に集中する。これらの大半は台風に起因する豪雨である。
 また、図2-ⅲ-1e~hには、年間を通じて集計した、時刻別のX mm以上の降水遭遇率を示した。これによれば、時間降水量1mm以上については朝と夕にやや値が大きいものの、顕著な日変化は認められない。時間降水量が10mmや20mmになると、朝方から午前と午後から夜に発生が2分される傾向がある。午後から夜の強雨は夏季の夕立に相当するが、港区では午前にも強雨の多いことが特徴的である。港区においては、後述のように東京都区部の中でも夕立に相当する短時間強雨がそれほど多くなく、時間帯に限定されない台風や前線などの擾乱に起因する強雨が相対的に目立っているためと考えられる。