1)気温の季節変化

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 通年半旬別平均値による日平均気温の季節変化を表した図2-ⅱ-4aによれば、港区で気温が最も低いのは1月21日~25日の第5半旬(日平均気温:6.1℃、日最低気温:3.4℃)や1月16日~20日の第4半旬(日最高気温:9.0℃)であり、一方で気温が最も高いのは8月4日~8日の第44半旬(日平均気温:28.7℃、日最低気温:26.0℃、日最高気温:32.0℃)である。気温の年較差として、通常用いられる最暖月と最寒月の平均気温差は、図2-ⅰ-1から21.7℃であるが、昼夜の日較差を含めた半旬別平均値による気温の変化幅は28.6℃に及んでいる。
 図2-ⅱ-4bには、図2-ⅱ-4aの日平均気温に関する半旬別平均値に基づいて、前半旬との気温差を求めて半旬あたりの気温変化量を示した。日平均気温の上昇期間と下降期間は、上述の日平均気温の極小半旬と極大半旬によって区切られるが、それぞれの期間において必ずしも気温は一様に上昇または下降しているわけではない。とりわけ気温の上昇期間については、4月初めに最も気温上昇量が大きいことが特徴的である。この期間は菜種梅雨の期間に相当し、文字通り一雨ごとに暖かさが増していく時期にあたっている。これは冷たい空気と暖かい空気との境をなす前線が日本付近で北上し、前線南側の温暖な空気の影響を次第に強く受けるようになるためである。一方で、5月中頃や6月前半に気温の上昇が相対的に小さい時期がある。これらはそれぞれ走り梅雨および梅雨季の前半の期間に相当する。本来ならば日射が強く気温が上昇しやすい時期に、曇雨天が継続したり、オホーツク海高気圧からの冷涼な北東気流の影響を受けたりするため、気温の上昇が抑制されることになる。しかしながら、梅雨季の後半になると、南方からの高温多湿な空気の影響を受けるようになり、気温の上昇量が増大する。気温の下降期間においては、9月から11月にかけて半旬あたり1℃程度と、やや大きな気温の低下を示す。ユーラシア大陸上の空気が次第に低温となり、秋雨の降水をもたらす前線北側に控えている大陸起源の低温な空気の影響を強く受けるようになる。
 日最高気温と日最低気温の差である気温の日較差(図2-ⅱ-4c)は、港区では3月から4月の春季に7~8℃とやや大きいが、それ以外の季節では曇雨天の多い梅雨季の6月に極小が認められるものの概ね一定の5~6℃である。日較差が大きい内陸盆地の甲府や東京西郊の八王子と比較すると、港区では秋季から冬季に気温日較差が顕著に小さいことが分かる。内陸では放射冷却によって夜間に気温が低下しやすい時期であっても、港区は温度変化が小さく表面温度の高い海(東京湾)に近接していることにより、気温低下が抑制されるためと考えられる。