3)冬季夜間の気温分布

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 東京都心が周囲に比べて高温となる程度を評価するために、東京都心(気象庁東京:千代田区大手町)と都区部外側(アメダス:府中、さいたま、船橋、海老名の平均)との毎時の気温差(ヒートアイランド強度:都心-都区部外側)を求め、その時間変化を冬季の晴天弱風日について図2-ⅳ-1に示した(高橋ほか 2014)。ここでは晴天弱風として、気象庁(大手町)における夜間平均の雲量が2以下、風速が3m/s以下の場合(73事例)を取り上げて、全事例の平均を太実線で示している。これによると、日中は東京都心と都区部外側にほとんど差は認められないが、日没前後の数時間で急に都心の高温の程度が大きくなる。その後は気温差が最大(冬季は4~5℃)となる日の出頃(06時)まで、少しずつ気温差が拡大し、日の出後は急激に気温差が消失する。ただし、風速や雲量に大差がない晴天弱風条件でも、個々の事例の気温差はかなりばらつく。また、06時の気温差が4℃以上(37事例)と4℃未満(36事例)の場合に分けてみると、やはり気象条件には差がないにもかかわらず、前者では気温差の拡大が持続するが、後者では夜半以降に気温差が縮小する。このように、都区部内外の気温差だけをみても、ヒートアイランド現象の現れ方は単純ではない。

図2-ⅳ-1────晴天弱風の冬季夜間における都心と都区部外側との気温差(ヒートアイランド強度)の時間変化

晴天弱風事例とは、夜間(18~06時)における平均雲量2以下で平均風速2m/s以下の場合を指す。太実線は全体(73事例)の平均、太破線は06時の気温差が4℃以上(●:37事例)、細線は4℃未満(○:36事例)を表す。対象期間は、2006/07年~2009/10年の11~2月である。
高橋ほか(2014)による。


 図2-ⅳ-2は、冬季晴天弱風の日の出頃(06時)において、図2-ⅳ-1で気温差が4℃以上あった37事例による平均気温分布図である。この図では、気象庁アメダスの他にも、自治体の大気汚染常時監視測定局(常監局)や、複数の大学・研究機関と共同運営している観測網(広域METROS;三上ほか 2011)など領域内124地点のデータを用いている。このような稠密観測網によると、冬季夜間の高温の中心は、中央区(銀座)付近にあることや、都区部の北部から西部および東部には、等温線の間隔が狭く、水平方向に気温が急に変化する気温急変域のあることがみて取れる。高温の中心や気温急変域の位置は、夜間を通してあまり変化しないが、時間の経過とともに次第に明瞭になっていく。都区部のスケールでみると、港区は東側が高温の中心に隣接し、西側に向かって気温が低下する地域にあたっている。

図2-ⅳ-2────晴天弱風の冬季における06時の平均気温分布
気温は領域平均気温からの偏差によって表現している。等値線は0.5℃間隔。
高橋ほか(2014)による。


 なお、すでに1939年には自動車9台による103地点の移動観測が行われ、東京における夜間の気温分布が描かれている(図2-ⅳ-3;福井・和田 1941)。ある1日の観測事例であり、観測方法も異なるが、図2-ⅳ-2と図2-ⅳ-3とを比較すると、高温の中心の位置や、高温の軸が都心から北北西方向に延びていること、高温の中心と都区部周縁部とで4~5℃の気温差があることなどの共通点が認められる。現在の冬季夜間における東京の気温分布は、第二次世界大戦前の面影を色濃く残しているといえるだろう。

図2-ⅳ-3────1939年3月6日に自動車9台を用いた103地点の移動観測による気温分布
測定値を24時に時刻補正している。図14と比較しやすいように、図の傾きと縦横比を調整している。
福井・和田(1941)による。