ⅴ 相対湿度

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 相対湿度は空気の乾湿の程度を表す指標の一つであり、空気中に保持できる最大の水蒸気量に対するその時の水蒸気量の百分率で表現される。水蒸気量として、空気塊を水蒸気と水蒸気を含まない乾燥空気とに分けた場合の水蒸気分圧(水蒸気圧)を用いて、飽和水蒸気圧e sに対する実際の水蒸気圧eの百分率(ee s×100%)で求められる。詳細は後述(第3節第ⅱ項3)するが、飽和水蒸気圧は気温の関数であり、気温が高くなると指数関数的に増加する。したがって、含まれる水蒸気量(水蒸気圧)が同じである場合には、気温が高(低)ければ相対湿度は低(高)くなる。相対湿度は水蒸気の絶対量を表現するわけではないが、体感や生活感覚との対応から実用面でよく用いられる。日本では、夏季にきわめて多湿となり、一般に相対湿度は夏季に高く、冬季には日本海側の多雪地域を除いて低くなる。また、日変化において、通常は気温の高い日中に相対湿度が低く、気温の低下する夜間に高くなる。
 相対湿度は気象庁の気象官署で観測されているが、アメダス観測点では行われていない。自治体の常監局では一部の観測点で計測されており、港区の環境総合測定局大気常時監視システムでは麻布局と一の橋局で相対湿度が観測されている。図2-ⅴ-1には、港区の相対湿度として、麻布局と一の橋局の平均(統計期間:2000~2018年)による相対湿度の季節(旬別値による:横軸)と時刻(縦軸)による変化を示した。

図2-ⅴ-1────港区における相対湿度の時間・季節変化
港区環境総合測定局大気常時監視システムの麻布局と一の橋局の平均を図示している。統計期間は2000~2018年。
港区の資料により作成。


 図2-ⅴ-1によれば、港区の相対湿度は冬季1月の昼過ぎに平均で40%程度と年間で最も低く、夜間には50%ほどである。夏季の特に梅雨季や秋雨・台風季など降水の多い時期には、早朝を中心として平均的に80%を超え、日中においても60%程度を示す。
 空気が湿っていると、蒸発が起こりにくいため、発汗しても汗が蒸発せず皮膚から熱が奪われにくくなり、体温の調整に支障をきたすことがある。熱中症の危険性を表現する指標として近年ではWBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)がよく用いられるが、気温と相対湿度から得られる簡便な指標として不快指数(THI mm:Temperature-Humidity Index)がある(式1、表3)。ただし、不快指数は、風によって奪われる熱や、日射・赤外線の放射を考慮していない。そのため、必ずしも体感を十分に表現する指数ではないが、指数70~74で不快感を抱く人が出始め、75~79で半数以上が、80~85で全員が不快と感じ、86を超えると我慢ができないほどとされる。日本人の場合、不快指数85で93%の人が蒸し暑さのため不快を感じるという。
THI mm=0.81×T +0.01×H (0.99×T -14.3)+46.3  (式1)
*ここでは、T が気温(℃)、H が相対湿度(%)を表す。

表3────不快指数と体感との関係


 参考までに、港区における気温と相対湿度の旬別、時刻別の値を用いて不快指数の平均的な季節と時刻による変化を求め、図2-ⅴ-2に示した。これによると、港区では8月上中旬の昼過ぎには不快指数が平均的に80を超え、夜間においても相対湿度の高さから7月中旬からほぼ8月いっぱいは75を超える。日中において平均的に70を超える期間があるのは5月下旬から9月いっぱいである。

図2-ⅴ-2────港区における不快指数の時間・季節変化
港区環境総合測定局大気常時監視システムの麻布局と一の橋局の平均を図示している。統計期間は2000~2018年。
港区の資料により作成。