1)窒素酸化物NOX(一酸化窒素NO、二酸化窒素NO2)

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 NOとNO2は、大気中における窒素酸化物(NOX)の主要な成分である。環境基準が定められているNO2は、生物活動によっても発生するが、大気汚染物質としては主として自動車のエンジンや工場のボイラーなどにおける燃焼過程で発生したNOが、大気中で酸化することによって生成する。NO2は呼吸によって人体に取り込まれ、呼吸器疾患の原因ともなる。環境基準では「1時間値の1日平均値が、0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること」とされている。
 都区部におけるNOやNO2濃度の経年変化(図2-ⅷ-1)は、1980~1990年代にかけてほぼ横ばいであったが、近年は濃度が低下しており、港区を含め都区部のほとんどの測定局で継続的に環境基準を満たしている。図2-ⅷ-2は、港区の5地点それぞれについて、NOX濃度(ppb)を月・時刻ごとに平均し、季節変化と時間変化を同時に示したものである。これによれば自排局の濃度は一般局と比べて全般に高く、自動車交通の影響が大きいことが推測される。台地側(赤坂局、麻布局)では11~2月の特に7~9時の時間帯および僅かながら夕方から夜半にかけて濃度が高くなる。一方、臨海部(芝浦局、港南局)では、日中に高濃度となる時間帯が10~12時と遅く、また6~7月にもその時間帯から夕方にかけてやや高濃度となる。

図2-ⅷ-2────港区の測定局における窒素酸化物(NOX)濃度の時刻・季節による変化

a)赤坂局(自排局)、b)麻布局(一般局)、c)一の橋局(自排局)、d)芝浦局(自排局)、e)港南局(一般局)。1ppbは0.001ppmに相当する。統計期間は2000~2018年。
港区における環境総合測定局大気常時監視システムの資料により作成。


 排出された汚染物質は、一般に大気が安定していると滞留・蓄積しやすい。夜間の放射冷却によって地表の気温が下がると上暖下冷の気層(逆転層)が形成され、このような状態が残っているときに、自動車交通量が多くなると汚染物質が高濃度になりやすい。図2-ⅷ-3には東京都常監局(立体局)の東京タワーで観測された冬季の気温鉛直分布の例を示した。夜間から朝(08時)には、高度150m付近より下層に、上暖下冷の逆転層(安定層)が形成されているが、09時には逆転層はほぼ解消している。逆転層の解消時には、次第に上下方向の空気の混合が大きくなるため、蓄積された汚染物質が上空から下降してくること(いぶし現象)によっても汚染物質濃度が高くなり易い。赤坂局や麻布局のような冬季の朝の濃度極大は一般によくみられる特徴である。夏季には逆転層が形成されにくいため、交通量の多い時間帯でも濃度があまり高くならないと考えられる。濃度の極大が遅い臨海部の芝浦局は、首都高速道路1号線、1号羽田線、11号台場線が近傍を通っている。周辺が工業地域であることや、台地部の通勤等の自動車混雑より少し遅れて、物流を担う大型車両が増加する影響が考えられる。このような状況は通年みられるが、春季や夏季は日中に南寄りの海風が強い(図2-ⅵ-2)ことから、自動車等から排出された汚染物質の滞留が妨げられて濃度が低くなり、天気が悪く海風が発達しにくい梅雨季(6、7月)にNOX濃度の極大が現れた可能性が考えられる。

図2-ⅷ-3────東京都常監局(立体局)の東京タワーで観測された冬季の気温鉛直分布の例
2003年12月6日23時~7日10時におけるいくつかの時刻を示す。図中の数字は時刻を表す。
東京都常監局の資料により作成。