SPMは、環境基準において「大気中に浮遊する粒子状物質であってその粒径が10μm以下のものをいう」と定義されている(1μm=10
-6m=0.000001m)。SPMには、自動車や工場などを発生源とする人為起源のものと、黄砂や海塩粒子などの自然起源のものがある。また、SPMは、発生源から直接粒子状の物質として排出される一次粒子と、発生源から揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)やNO
X、SO
X等の気体として排出されたものが光化学反応などによって粒子状に変化した二次粒子に分けられる。環境基準では「1時間値の1日平均値が0.10mg/m
3以下であり、かつ、1時間値が0.20mg/m
3以下であること」とされている。東京都のSPM濃度は減少傾向にあり(図2-ⅷ-1)、港区を含めほとんどの測定局で環境基準を満たしている。港区におけるSPM濃度の季節変化と時間変化を示した図2-ⅷ-4によれば、暖候季の特に7、8月の盛夏季において日中を中心にSPM濃度が高くなり、これは各測定局に共通する。また、測定局によるSPM濃度の差異も芝浦局を除いて大きくない。これらの特徴は、交通量や大気の安定度との対応が考えられたNO
X(図2-ⅷ-2)とはかなり異なっている。工業地域の芝浦局で高いことから、自動車や工場等から排出される一次粒子による影響も無視できない。その一方で、夏季日中に濃度が高いことから、詳細にはSPMを形成する化学成分等を調べる必要があるものの、光化学反応による二次粒子の寄与が相対的に大きい可能性がある。
図2-ⅷ-4────港区の測定局における浮遊粒子状物質(SPM)濃度の時刻・季節による変化
a)赤坂局(自排局)、b)麻布局(一般局)、c)一の橋局(自排局)、d)芝浦局(自排局)、e)港南局(一般局)。1μg/m2は0.001mg/m2に相当する。統計期間は2000~2018年。
港区における環境総合測定局大気常時監視システムの資料により作成。