1)始生代から中生代

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 地質時代には、地球上に大規模な氷(氷床)が存在した氷河時代が何回か存在し、温暖で氷河時代でなかった温室期に対して氷室期ともいうことがある。現在は南極大陸やグリーンランドに氷床が大規模に存在している氷河時代であり、その中ではやや温暖な間氷期にあたっている。地質時代の気候変化は、化石や岩石などの地質学的証拠に基づく環境から推定される。なお、参考として地質時代区分を図3-ⅰ-1に示した。

図3-ⅰ-1────地質時代区分
小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』「地質時代」より。


 地球の誕生は約46億年前とされる。始生代(太古代、約40億年前から25億年前)の初期には円磨された礫が存在し、液体の水が陸上に存在したことが想定され、気温は少なくとも0℃以上で温暖であったと推定される。当時の太陽は暗く日射は弱かったが、大気中には高濃度で二酸化炭素が存在したため、温室効果によって気温が高かった。原始海洋中で生命活動が始まり、始生代末期には光合成をする微生物が現れた。これにより地球大気の二酸化炭素が減少し、酸素が増加していった。酸素は太陽からの紫外線を受けてオゾン(O3)を生成し、長い時間をかけて古生代(約5.4億年前から2.5億年前)の中頃にはオゾン層が形成され、地上に到達する有害な紫外線が少なくなった。それまでは水中にしか生物は生存しなかったが、古生代中頃には植物や節足動物、両生類が陸上に進出した。
 温暖な始生代を経て、原生代(約25億年前から5.4億年前)には、複数の氷河時代があったと考えられており、特にその末期には当時の赤道付近まで氷河に覆われる「全球凍結事件」が起きたとされる。この理由として、生物の光合成活動に伴う二酸化炭素の減少により、温室効果が弱まったことが考えられており、温暖な気候への復帰には活発な火山活動による二酸化炭素の大気中への放出があったと推測される。
 古生代の石炭紀(約3億年前)には、現在の南極から南緯40度付近(北半球は不明)に氷床の発達したことが知られており、現在と同程度かやや寒冷であったと考えられる。また、古生代のオルドビス紀後期からシルル紀前期には急激な寒冷化が起こったとされ、生物の大量絶滅をもたらしたと考えられている。特に古生代末期には生物種の約96%が失われるという最も大規模な生物大量絶滅が起きており、これには急激な寒冷化とともに海洋底が無酸素状態に陥るなど環境の激変が関与したことが示唆される。
 中生代(約2.5億年前から6,600万年前)は全般に温暖な時代で、大気中のCO2濃度が特に高かった白亜紀中期の気温は、赤道付近では現在に比べて数度高い程度であったが、北極では20℃、南極では40℃以上も高かったと推定される(Ruddiman 2008)。古生代後期に現れた爬虫類は大型化し、ジュラ紀には大型肉食恐竜が地表生態系の頂点に立った。なお、三畳紀とジュラ紀の境界(約2億年前)および中生代末(白亜紀末)には全生物種のおよそ70%が絶滅したと考えられており、後者の大量絶滅の原因として巨大隕石(小惑星)の衝突が有力視されている。