ⅰ 気象災害について

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 気象現象が主要な発生要因とみなせる災害を気象災害という。気象災害の種類はきわめて多岐にわたるが、気象現象が及ぼした影響の継続時間や気象現象の性質、発生した個々の災害の空間的広がりなどによって、気象災害は表4に示した二つの類型に大きく分けることができる(畠山 1966など)。

表4────気象災害の2類型


 類型Aには、台風や前線に伴う集中豪雨や竜巻などの激しい気象現象による洪水害や浸水害、強風害などが該当し、春から初夏に多く果樹などに被害をもたらすひょう(雹)害や、春秋(遅霜・早霜)の凍霜害などが含まれる。類型Bは長期緩慢災害とも呼ばれ、オホーツク海高気圧などの影響で低温や日照不足が持続した場合(東北地方の「やませ」など)の冷害や、空梅雨の場合の干害などが該当する。近年では、1993年や2003年の夏季を中心に広域的な低温と日照不足が発生し、とりわけ1993年は稲作への影響が甚大で、東南アジアなどから米が輸入された。一転して1994年は、全国的に春先から高温・少雨が継続し、40都道府県で給水制限が実施された。また、西日本を中心に高温・少雨が継続した2005年には、四国の水瓶と称される早明浦ダムの貯水率が0%となった。なお、この時は、台風14号の大雨により、1日で貯水率100%に復帰した。本稿では類型Aに該当する大雨等に起因する水害を取り上げる。