図4-ⅲ-1は、1棟以上の床上・床下浸水が発生した事例数を上部に、年ごとに合計した床上浸水と床下浸水の棟数をそれぞれ赤と黒の棒グラフ(対数目盛)で示している。これによると、1974年から1990年代の終わり頃までは、2~3年に1回(事例)程度の頻度で発生しているが、床下浸水が多い。ところが1999~2005年の7年間には毎年発生しており、発生回数も多く、床上浸水の割合も小さくない。しかし2006年以降の最近11年間には2回しか発生していない。なお、1993年には、台風11号の大雨によって都内各所で浸水が発生しており、JR品川駅や地下鉄赤坂見附駅が冠水したほか、JR御茶ノ水駅で線路下の地盤が崩れるなど、交通機関に大きな影響があった。
図4-ⅲ-1────港区における1974~2016年の年別床下浸水(黒)・床上浸水(赤)棟数と発生事例数
縦軸は棟数の対数で示している。図上部の数値が年別の事例数を表す。土砂災害によるものを含む。
東京都建設局「過去の水害記録」(http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/jigyo/river/suishin/suigai_kiroku/kako.html)による43年間(1974~2016年)の資料を使用した。
次に港区における床上・床下浸水発生の地域性を知るために、表5には町丁目別に発生回数を集計した。43年間における最多は高輪1丁目の11回で、次いで西麻布2丁目の9回、白金台1丁目の8回などである。ただし、町丁目ごとの面積には差異があることから、これを等しく単位面積(1km2)あたりの年間の回数として規格化し、発生のしやすさを表す規格化回数として表5に示した。これによれば規格化回数は傾斜地の多い麻布狸穴町が最も多い。芝公園や新橋、浜松町など低平な市街地も含まれるが、町丁目別の集計では詳細な地形との対応が困難であるものの、床上・床下浸水は小谷によって開析された台地上の低所で発生しやすいと考えられる。
表5────1974~2016年における床下・床上浸水の町丁目別発生回数
町丁目ごとの面積の違いを考慮し、43年間における実際の回数とともに、1km2あたり1年あたりの発生回数を規格化回数として示した。表中には規格化回数が0.9以上の町丁目を挙げた。なお、1、2丁目などと複数の町丁目が表記されている場合も、それぞれ1回として集計した。ただし、少数の丁目表記がない場合(麻布狸穴町を除く)は集計に含めていない。土砂災害によるものを含む。資料は図4-ⅲ-1と同じ。