◎地球温暖化と温室効果

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地球全体で平均した年平均気温は、100年あたり約0.7℃の割合で上昇しており(図3-ⅱ-2)、これが化石燃料の燃焼等によって放出された二酸化炭素など温室効果ガスの増加による地球温暖化の現れと考えられている。
温室効果は、地表面から放射される赤外線のエネルギー(赤外放射)を、大気中の二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが吸収し、そこから再放射されて地表面に向かう赤外放射が増加することによる保温効果と捉えられる。図(1)はIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)の報告書(IPCC 2007)に示されている、地球大気に関係した現実のエネルギーバランス(数字は単位面積あたりを出入りするエネルギーの大きさで単位はW/m2)であり、これは地球全体で平均した状態を表している。宇宙からみた地球は、太陽からやってくるエネルギー(太陽放射)と、それが雲や地表面による反射で地球外に出ていくエネルギーとの差し引きが、大気や地表面から出て行く赤外放射とつりあった状態(342-107=235)にある。一方で地表面をみると、地表面が受け取る太陽放射(168)に対して、地表面から出て行く赤外放射や熱(顕熱)、蒸発(潜熱)のエネルギー(390+24+78)は不相応に大きい。これは上述のように、温室効果ガスから下向きに再放射されて地表面に向かう大きな赤外放射(324)があるためで、この結果、地表面から上向きに出ていく大きな赤外放射が現れている。ここで、表面から出て行く単位面積あたりの放射の大きさJ (W/m2)は、ステファン・ボルツマンの法則により、物体表面の絶対温度T (K:ケルビン)の4乗に比例する(式2)。

図(1)────地球大気に関するエネルギーバランス

数字は単位面積あたりを出入りするエネルギーの大きさ(W/m2)を表す。また、青破線は大気圏の上端(その上は宇宙空間)を示す。
IPCC(2007)に加筆修正。


 
  J =σT 4 (式2)
式2において、σ=5.67×10-8(W/m2/K4)はステファン・ボルツマン定数である。なお、絶対温度T (K)は、通常用いられる摂氏温度t (℃)の数値に273.15を加算した値をとる。
図(1)にある地表面からの放射390(W/m2)は約288(K)(約15℃)の表面温度に対応し、これが地球全体の平均気温に相当する。温室効果ガスの増加に伴う下向きの赤外放射の増加は、地表面から上向きに出て行く赤外放射の増加をもたらし、したがって表面温度・気温を上昇させる。やや複雑であるが、このような表面温度と上向き・下向きの赤外放射のバランスによって地表の温度が決まってくる。
宇宙空間へ出て行く赤外放射が温室効果ガスによって減少するわけではないので、宇宙空間からみた場合には、上述のようにエネルギーの出入りは基本的に釣り合っている。ただし、IPCCの2013年における報告書(IPCC 2013)では、人工衛星からの精密観測に基づき、宇宙空間へ出て行く放射が入ってくる放射に比べて僅かに小さいとされている。地球に残ったこの余剰分は、海洋の深部に蓄積されているとみられ(IPCC 2013)、この熱が今後大気に放出されれば地球温暖化のさらなる進行につながる可能性がある。深海を含めた地球の熱輸送等の全貌には不明な点が多く、解明されるべき課題は多い。