2)陸水域の底生生物

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 自然教育園と旧芝離宮恩賜庭園、弁慶堀、有栖川宮記念公園、および古川の調査によると、港区の陸水域の底生生物は75科179種が記録されている。貝の仲間の軟体動物やミミズやゴカイの仲間の環形動物、エビ・カニ類や昆虫類の節足動物など、多様な分類群からなる。自然教育園の記録では11種が確認されているが、第2次生物現況調査の旧芝離宮恩賜庭園では43種、弁慶堀では40種、有栖川宮記念公園では31種が記録されている。また、古川の上流域では50種、中流域で15種、下流域で35種の記録がある。古川上流では、サカマキガイ科のサカマキガイ(写真2-ⅲ-7)やイシビル科のシマイシビル(写真2-ⅲ-8)、ミズムシ科のミズムシといった水質汚濁に強い種が出現し、下流になるとイガイ科のコウロエンカワヒバリガイやゴカイ類、フジツボ類、モクズガニ科のタカノケフサイソガニなどの汽水域に生息する種が多く出現する。なお、古川下流の出現種数は、夏には1種、秋には0種と、貧酸素状態になってしまう東京湾の湾奥の厳しい環境を反映している。

写真2-ⅲ-7────サカマキガイ

写真2-ⅲ-8────シマイシビル


 陸水域の底生生物の重要種は5科5種である。環境省RLの絶滅危惧Ⅱ類VUにシジミ科のマシジミが、準絶滅危惧NTにタニシ科のオオタニシ(写真2-ⅲ-9)とモノアラガイ(写真2-ⅲ-10)科のモノアラガイ、イシガイ科のカラスガイが、さらに情報不足DDにヒラマキガイ科のヒラマキミズマイマイが指定されている。東京都RDBの準絶滅危惧NTに指定されているオニヤンマの幼虫も確認されている。

写真2-ⅲ-9────オオタニシ

写真2-ⅲ-10────モノアラガイ


 また、外来種は13種で、アメリカザリガニ科のアメリカザリガニ(写真2-ⅲ-11)が外来種リストの緊急対策外来種に指定されている。さらに、イガイ科のコウロエンカワヒバリガイやシジミ科のタイワンシジミ、フジツボ科のタテジマフジツボ、ワタリガニ科のチチュウカイミドリガニの4種がその他の総合対策外来種に指定されている。これらの外来種は1996~2008年に初めて確認されている。

写真2-ⅲ-11────アメリカザリガニ


 古川の上流域と杉並区の3河川とを比較すると、古川の36種に対して妙正寺川30種、善福寺川46種、神田川48種であった。古川では、ヒメタニシやカワニナなどの貝類やテナガエビやスジエビなどの甲殻類、トンボの仲間が少ないことが特徴的である。これらの生物は水生植物が生育・繁茂している止水や流れの緩やかな水域に生息する種類である。しかし古川では、川床や岸壁がコンクリートによって護岸整備されているために水生植物はほとんど生育できない。さらに、降雨出水時には流れが強いために、止水域や緩流域の環境が整えられないのが現状である。