5)海域の魚類

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 これまでに44科104種が確認されている。ハゼ科魚類が最も多い27種で、次いでコイ科とボラ科の5種、ニシン科の4種などである。東京湾の湾奥に出現する典型的な魚類としては、干潟域や浅い砂泥底域に生息するアカエイ科のアカエイ(写真2-ⅲ-27)やキス科のシロギス、ハゼ科のビリンゴやマハゼ、ヒメハゼ、エドハゼなど、あるいはカレイ科のイシガレイ(写真2-ⅲ-28)とマコガレイがあげられ、遊泳性のある魚種としてはニシン科のサッパやコノシロ(写真2-ⅲ-29)、ボラ科のボラ、スズキ科のスズキ(写真2-ⅲ-30)、シマイサキ科のコトヒキ、ヒイラギ科のヒイラギ、タイ科のクロダイなどが出現する。岸壁の付着生物の周辺には、ニシキギンポ科のギンポ(写真2-ⅲ-31)やイソギンポ科のトサカギンポ(写真2-ⅲ-32)やイダテンギンポ(写真2-ⅲ-33)、ナベカが生息している。冬季の浅瀬では河川に遡上する前のアユが優占する。また、淡水魚であるコイ科のウグイやモツゴ、カダヤシ科のカダヤシ、サンフィッシュ科のブルーギルなどが、雨などで流下し、出現する。

写真2-ⅲ-27────アカエイ

写真2-ⅲ-28────イシガレイ

写真2-ⅲ-29────コノシロ

写真2-ⅲ-30────スズキ

写真2-ⅲ-31────ギンポ

写真2-ⅲ-32────トサカギンポ

写真2-ⅲ-33────イダテンギンポ


 海域の魚類の重要種は15種である。環境省RLの絶滅危惧IB類ENに指定されているのがウナギ科のニホンウナギであるが、東京都RDBの区部では「確認種」になっていない。環境省RLの絶滅危惧Ⅱ類VUに指定されているのがメダカ科のミナミメダカ(東京都RDBでは絶滅危惧Ⅰ類CR/EN)およびハゼ科のエドハゼ(東京都でもVU)とマサゴハゼ(東京都でもVU)で、準絶滅危惧NTに指定されているのがハゼ科のヒモハゼ(東京都では指定なし)である。ほかの10種は、東京都RDBで絶滅危惧Ⅱ類VU(ハゼ科のミミズハゼ)や準絶滅危惧NT(ボラ科のメナダやハゼ科のビリンゴやヒメハゼなど5種)、および現時点では絶滅のおそれはないと判断される「留意種」(コイ科のマルタなど4種)に指定されている。
 外来種は3種で、カダヤシとブルーギル、およびモロネ科のシマスズキである。カダヤシとブルーギルは河川域からの流下個体で、シマスズキについてはおそらく人為的に放流された個体である。東京湾の湾奥の海域は、外来種が定着するには、環境が厳しいのかもしれない。
 第2次生物現況調査では、東京湾の各地でよく研究の行われている小型地曵網による調査結果と第2次生物現況調査のお台場海浜公園の人工砂浜とを比較している。お台場海浜公園は、多摩川や江戸川、荒川の河口干潟や潟湖である新浜湖(市川市)あるいは養老川河口に近い魚類相を示し、葛西人工渚や八景島(横浜市)の砂浜海岸、小櫃川(木更津市)と小糸川(君津市)の河口干潟とは別なグループに属した。これらの結果は、港区の海域の魚類は東京湾内湾の典型的な魚類相を反映していることを示している。
 近年東京湾で報告されるようになった魚類としてクロホシマンジュウダイ科のクロホシマンジュウダイやハゼ科のウロハゼとヒナハゼ(写真2-ⅲ-34)、およびギマ科のギマ(写真2-ⅲ-35)などがあげられる。例えばヒナハゼは、1998年に東京湾の湾口部に位置する館山湾の奥で採集されてから、2003~2005年には港区の高浜運河と東京海洋大学の係船場でも確認されている。さらにヒナハゼとウロハゼは湾奥での産卵も確認されている。これらの魚類の主な分布域は暖かい海である。こうした現象は、海水温の上昇に加えて、東京湾の湾奥での都市化にともなう水温の上昇などによるものと考えられている。

写真2-ⅲ-34────ヒナハゼ

写真2-ⅲ-35────ギマ