生物の歴史と環境

10 ~ 11 / 278ページ
 港区の生物を知る手がかりは、4,000年から3,000年ほど前の伊皿子貝塚や西久保八幡貝塚、および溜池跡遺跡の地層等から得られます。しかもその環境は、まったくの自然ではなく、人びとの生活に強く影響されています。その後江戸時代になるまで、植生や動物相に関する情報は断片的です。
 江戸時代になると、自然史的な動植物の情報は増えますが、それ以上に花卉(かき)園芸文化が盛んになり、食文化も隆盛を極めました。同時に地形の改変もおこなわれるようになります。
 現在の港区の生物をとりまく環境は、ほとんどが人工的です(図1-1-3、図1-1-4)。その究極が市街地(図1-1-5)で、舗装された道路やビルに囲まれています。対照的に国立科学博物館附属自然教育園(図1-1-6)や愛宕神社(図1-1-7)など粗放的(保全のため手入れをしすぎないこと)に管理されている樹林地は、江戸時代からの屋敷跡や社寺の境内です。有栖川宮記念公園などは屋敷跡を公園にしたもので、下草刈りなどをしている林床管理型の樹林地になります。さらに芝公園や高輪公園などは都市公園型の樹林地です。草地としては三田台公園などが、海浜地としてはお台場海浜公園などがあります。弁慶堀や古川などの陸水域や直立護岸で囲まれた運河と造成された沿岸域が水域を形成しています。
 こうした多様な港区の環境において、これまでに6,500種あまり、平成20年(2008)の調査では2,171種の生物が確認されています(表1-1-1)。
(河野 博)

図1-1-3 再開発事業を通じて整備された庭園(毛利庭園・六本木六丁目)
写真提供:六本木ヒルズ

図1-1-4 開発事業で創出された緑の空間(港南二丁目)

図1-1-5 市街地(虎ノ門ヒルズ周辺)

図1-1-6 国立科学博物館附属自然教育園(白金台五丁目)

図1-1-7 愛宕神社(愛宕一丁目)

表1-1-1 港区で確認された生きもの
『港区生物多様性地域戦略―生物多様性みなとプラン―』 2014