西高東低

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 港区の地形は、西から東に向けて徐々に高度を下げ、標高5m以下の低地を経て海浜部に至ります(図1-2-2)。最高地は武蔵野台地上の北青山三丁目付近にあり、T.P. (東京湾平均海面高度)34mほどです。最低地は、東京低地の一画に当たるJR浜松町駅北口前のガード下で、T.P.0.08mです。
 港区の西半域に広がる武蔵野台地は、東京西部から高度を下げながら区部に至ります。港区はその最東端の一画に位置し、中央を流れる古川とその支流、東方の海に注ぎ込む河川などに刻まれた谷によっていくつかの台地にわけられ、それぞれ青山台地、赤坂台地、飯倉台地、麻布台地、白金台地、高輪台地などの名前が付けられています。高輪台地の北方には、台地に比べて一段低い三田段丘が形成されています。台地の標高は、最も西に位置する青山台地が高く、赤坂台地、麻布台地、白金台地は少し下って30mを多少超える程度、飯倉台地が30m前後とやや低くなり、高輪台地は25~28mほどです。三田段丘は16~18mと低く、飯倉台地の東端に当たる芝公園から愛宕山に至る高台も25m前後で、西方の台地に比べるとやや低くなります。ちなみに、自然地形の山として23区で最も高いとされている愛宕山の頂上はT.P. 25.7mです。
 このように、港区の地形はあたかもひな壇のように、西から東に向けて下っていることがわかります。次に、台地の東方に広がる低地を見てみましょう。
 港区の東半域には、標高が5m以下の平坦な低地が広がっています。北東の一画が東京低地の一部に当たり、東京湾沿いに形成された海岸低地と、その東方の海浜部埋立地からなります。
 約2万年前の最終氷期最盛期、海面は現在に比べて120mほど低下していました。東京湾の大半は陸化し、台地となった現在の湾底には古東京川と呼ばれる大きな川が流れていました。また、全体が大きなくぼ地のような地形となり、古東京川や支流によって谷が刻まれました。今から約1万2,000年前に最後の氷期を迎えた後、地球全体で温暖化が進み、くぼ地や谷に海水が浸入してきます。この折、波の作用により台地の縁が後退し、そこには海食台(波食台)と呼ばれる地形が形成されます。港区周辺では、霞ヶ関から愛宕下、芝公園にかけて、ならびに駿河台南部から汐留地区にかけて顕著にみられます。前者は標高が5mを超え、後者は、江戸前島と呼ばれる標高4m以上の微高地として展開します。汐留地区と同じような微高地は古川の南にも形成されましたが、現在、これらは5~10m程度の厚みをもつ盛土層や沖積層の下に埋没しています。

図1-2-2 港区の地形

左は国土地理院(https://www.gsi.go.jp)が公開している1/25,000デジタル標高地形図をもとに作成 右は『新修港区史』1編1章図3をもとに作成した地形と地質の区分図