屋敷跡や社寺境内

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 もともとは高松藩下屋敷だった国立科学博物館附属自然教育園や紀州徳川家上屋敷だった赤坂御用地には、江戸時代以降の大規模な樹林が残されています。また、慶長8年(1603)創建の愛宕神社(図1-3-2)や寛永13年(1636)以降高輪にある東禅寺の境内にも社寺林が残されています。こうした樹林地は、あえて下草刈りなどをしないで粗放的に管理されているため、在来種の生育・生息状態がよく、外来種の侵入も少ないといった特徴をもっています。また、池なども備えているため、水辺にすむ生きものたちでも賑わっています。
 樹林を形成する樹木は自然の状態に近く、スダジイやケヤキ、ムクノキなどが鬱蒼(うっそう)と茂り、これらの木々にはキビタキやオオルリなどの鳥類が好んでやってきます。少し低い木ではモチノキやアオキ、ヤブツバキが藪を形成し、メジロやアオジなどが生息しています。地表には落ち葉や枝などが積もり、その上にはハリガネオチバタケ(図1-3-3)が群生し、赤い実を付けたマンリョウ(図1-3-4)などが生育しています。池にはトンボの仲間が飛来し、早春にはヒキガエルが卵を産みます。
 

図1-3-2 愛宕神社

図1-3-3 ハリガネオチバタケ

図1-3-4 マンリョウ