コラム〈調べる〉港区の海浜を歩く

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 ここでは、埋立地や運河などに生育・生息する海辺の動植物を概観しましょう。
 港区には自然の海岸線がありません。すべてが護岸されているか人工の浜です。東には、お台場海浜公園と人工の砂浜や磯浜、および第三・第六台場があります。海沿いの埋立地には南北に直立護岸で囲まれた高浜運河がはしり、運河の南の端には東京海洋大学があります。
 

 


 まず、海浜性の植物に注目しましょう。東京湾に面した臨海部では、人や物の移動が頻繁で、外来種が侵入する機会が多いのも特徴です。お台場海浜公園や東京海洋大学(①)では3分の1の植物が外来種です。よく知られているセイタカアワダチソウ(②)やオオアレチノギクは東京海洋大学や埋立地でよく見かけます。外来生物法によって特定外来種に指定されているアレチウリは、お台場海浜公園で生育しています。ハマヒルガオやツルナといった在来の海岸性植物も、お台場海浜公園でみられます。
 お台場海浜公園の浜ではアオサ類(③)などを見ることができます。ホソアヤギヌ(④)というコノハノリ科の貴重な海藻が高浜運河(⑤)の護岸で見つかっています。
 高浜運河の直立護岸やお台場海浜公園の人工磯浜には、ムラサキイガイやミドリイガイ、アメリカフジツボなどがびっしりと付着しています。これらはすべて外来種です。高浜運河では底生生物の25%、お台場海浜公園の人工磯浜では16%が外来種です。付着生物の間に生息しているイッカククモガニやチチュウカイミドリガニも外来種です。在来種ではマガキやシロスジフジツボ、あるいはタカノケフサイソガニなどが観察できます。
 お台場海浜公園の人工砂浜に少し入ると、アサリやサルボウガイを見つけることができます。少し大きな灰色っぽい貝は北米原産のホンビノスガイです。コメツキガニも砂浜でみられます。
 

① 東京海洋大学

② セイタカアワダチソウ

③ アオサの仲間(緑藻類)

④ ホソアヤギヌ

⑤ 高浜運河


 
 鳥類は、運河やお台場あたりで簡単に観察できます。運河では、カワウやカルガモ、ウミネコなどを見かけます。お台場海浜公園地区では、冬になるとスズガモ(⑥)の大群が飛来し、ユリカモメやセグロカモメが飛んでいます。カンムリカイツブリなどの珍しい鳥を見つけることができるかもしれません。立ち入り禁止の第六台場では、コサギやアオサギが繁殖しています。また、夏になると、海面にダイブして魚をとっているコアジサシを見かけることがあります。上空を悠々と飛んでいるのは、ハヤブサとチョウゲンボウです。
 運河には浅瀬や干潟がないため、魚類は遊泳力のあるボラやスズキなどに限られます。お台場海浜公園の人工の砂浜や磯浜には、小型の魚類や産まれて間もない魚の子どもも生活しています。磯浜(⑦)では、マハゼが釣れ、手網でチチブ(⑧)をすくうこともできます。小型の地曳網を砂浜で曳くと、いろいろな魚がとれます。春にはハゼの仲間の子どもが大量に出現し、冬になるとアユが最も多くなります。
 港区では気軽に海辺に行くことができます。沿岸部ではふだんは目にしないような楽しい出会いもありますが、いろいろな危険も隠れています。季節にあった準備をしっかりとし、安全には十分に気をつけて港区の海浜を楽しみましょう。
(河野 博)

⑥ スズガモ

⑦ 人工磯浜(石積み護岸)

⑧ チチブ


 
港区内の施設 東京海洋大学 ミュージアム機構 マリンサイエンスミュージアム
 東京海洋大学は、平成15年(2003)10月に、東京水産大学(港区)と東京商船大学(江東区)が統合してできた大学で、港区の品川キャンパスにはマリンサイエンスミュージアムや図書館も開設されています。マリンサイエンスミュージアムでは、海洋生物の標本、漁法や水産物の加工法などに関わるさまざまな資料を展示しています。また、図書館は、海洋生物学だけではなく、水産学や食品に関する図書が多く所蔵されており、入館時に受付簿に氏名などを記入すれば、一般の方も利用できます。

展示風景

全長約13mのコククジラの全身骨格標本


 
港区内の施設 港区立郷土歴史館
 テーマⅠ「海とひとのダイナミズム」(3階)の最初の展示室「東京湾内湾の世界」で、沿岸地形や沿岸にすむ生物の変化、海の水質と内湾漁業との関わりや内湾の環境問題について学ぶことができます。また、東京湾沿岸に生息する代表的な魚貝類の生体展示がおこなわれています。

生体展示の様子

展示風景