遺跡にみる火事の痕跡

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 江戸は火災都市と呼ばれるほど、火事が頻発するまちでした。明暦の大火や目黒行人坂火事など、大火とされる火事は約90件に及ぶといいます。遺跡で火事の痕跡を捉える場合、焼土と呼ばれる赤色あるいは赤褐色の土壌に注目します。
 焼土は、高熱によって変化した土や焼けて細かく砕けた建材などから成り、多くの場合、土層断面観察によって明確に確認することができます(図5-4-3)。図5-4-2や図5-4-3をよくみると、複数の焼土層が重なっていることがわかります。これらは火事の度に生成されたもので、江戸時代を通じて幾度か火事に遭っていることを示しています。焼土は、遺跡地の広範囲にわたって分布している場合や島状に点在している場合があります(図5-4-4)。焼土を廃棄した土坑や、火事によって焼け落ちた木造構築物の一部が、そのままの状態で検出されることもあります。

図5-4-3 重層する焼土層―伊勢菰野藩土方家屋敷跡遺跡

図5-4-4 面的に広がる焼土―汐留遺跡(部分)
写真提供:東京都教育委員会