天下の城下町江戸と大名屋敷

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 幕府は大名に原則として1年おきの参勤交代と妻子の江戸居住を強制し、その居所として拝領屋敷を与えました。参勤交代には多数の家臣らが随従し、江戸屋敷は藩の江戸役所としての機能をあわせ持つことになったのです。こうした大名屋敷は、天下の城下町江戸に特徴的な空間といえるでしょう。
 各藩は、参府した大名が居住する上屋敷、隠居した前藩主や嗣子(しし)の住居その他の機能を有する中屋敷、避難先・別荘として機能し、時に野菜や資材の供給も担った下屋敷等を有していました。
 現在の港区域には多くの大名屋敷が集積していました。愛宕下など比較的江戸城から近い場所には上屋敷・中屋敷が、江戸の周縁部には下屋敷が多く造営され、起伏に富んだ地形をうまく利用した庭園も営まれていました。
 表5-5-1、図5-5-2は、幕末に幕府の屋敷改が作成した『諸向地面取調書(しょむきじめんとりしらべしょ)』をもとに、屋敷の種別ごとに江戸全体の屋敷筆数とそこに占める港区域の屋敷の割合を示したものです。一般に郊外の村落に見られる「抱地(かかえち)」は1件もありませんが、全体として高い比率で大名屋敷が集積していたとみることができます。

表5-5-1 港区域の大名屋敷

港区編 2021 『港区史』通史編近世(上)、二章一節一項「大名屋敷の性格と構造」(宮崎勝美執筆)所収の表を参照

図5-5-2 港区域の大名屋敷