図5-8-1 『天保武鑑』三 天保2年(1831) 須原屋版
国立国会図書館デジタルコレクションより転載
江戸時代、大名家や幕府諸役人を対象とした武家名鑑が民間の出版元から発行されていました。『武鑑(ぶかん)』と呼ばれる書物です。上の図には本節で取り上げる松平定朝(さだとも)が京都町奉行の時の記載が見えます。ここからわかるように、役人については、役職名・家紋・石高・父の名前・就任年月・屋敷地・家臣名・旗印・御用日等が記載されています。このような情報は、武士自身はもちろん、出入りの商人や職人の必要から、また地方への土産物としても購入されており、しかも人事異動により常に最新版への更新も必要なため、息の長いベストセラーになっていたのです。
〈→『通史編』近世(上) 第二章〉