港区は寺院が多いまちです。古代に創建された伝承をもつ寺院や中世から存続している寺院もみられますが、多くは江戸時代に創建あるいは移転してきた寺院です。近代に入ると、拝領地の上地や寺請制度廃止の影響などで境内の縮小を余儀なくされた寺院や廃寺、他所へ移動する寺院が現れます。戦後は、市街地再開発事業などの進展にともない、境内の一画を売却したり、港区外へ移転する寺院が現れます。港区内では工事中に人骨が発見されることがありますが、発見地の多くはこうした寺院跡地に相当します。しかし昭和50年代前半までは、これらが埋蔵文化財として認定されることはほとんどありませんでした。昭和50年代後半に入ると、近世の墓跡・寺院跡が文化財保護法に基づく埋蔵文化財包蔵地(遺跡)として位置付けられるようになり、発掘調査が進展します。