遺物にみる上行寺の姿

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 上行寺・上行寺門前町屋跡遺跡の発掘調査は、寺院の墓域空間と非墓域空間を対象とするものでした。したがって出土遺物には、墓にともなう資料のほか、寺院内でのさまざまな活動をうかがえる多数の資料がみられます。仏事に関わる香炉や仏花瓶、法事などの際に用いられた喫茶や会食用の器などに寺院什器の特徴をみることができます。また、鍋島焼(図5-12-6)や一般に流通していない禁裏(きんり)御用製品の磁器御所茶碗(図5-12-7)、多様な中国製陶磁器、西洋硬質陶器等の出土遺物からは、徳川将軍家、武家や公家、文人墨客と深い関わりをもっていた近世上行寺の性格が垣間見えます(図5-12-8)。
(髙山 優)

図5-12-6 鍋島焼

図5-12-7 磁器御所茶碗(縮尺1/2・部分)

図5-12-8 俳人・宝井其角の墓 『新撰東京名所図会』
資料提供:国立国会図書館