図5-16-1 歌川広重「東都三十六景 高輪海岸」
この図版は歌川広重『東都三十六景』の中の 1 枚、「高輪海岸」です。海岸をテーマとしながらも中心に描かれているのが牛というのは、どういうわけなのでしょうか。船で江戸へもたらされる大量の物資は、河岸(かし)の物揚げ場から陸上運輸業者の手によって市中各所へ運ばれましたが、高輪には芝車町(現在の高輪二丁目、芝浦四丁目)という牛車による陸上運送のプロ集団が住まう町が存在していました。海上輸送と陸上輸送の結節点が、この「海岸の牛」によって見事に表現されているのです。
〈→『通史編』近世(下) 第四章〉