御台場の構築方法

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 図5-18-3は、第五台場の発掘調査の成果を受けて作成した構造模式図です。まず埋立てにあたり、磯子(いそご)村(現在の神奈川県横浜市)や逸見(へみ)村・長浦(ながうら)村(同横須賀市)といった地域から切り出した土丹岩(どたんがん)と呼ばれる粘土質の泥岩(でいがん)(シルト岩)を大量に築造地周辺に沈めます。この土丹岩は水を通さない性質を持っているため、各御台場の本体まわりに高く積み上げることで、海水の浸入を防ぐことができるのです。
 土丹岩を海に沈め終えた後、御台場本体の築造に取りかかります。ここには土丹岩のほか、主に泉岳寺山・八ッ山(やつやま)・御殿山(現在の高輪・品川区北品川)などで採取した土砂を埋めた上で均(なら)し、海上に島を造りながら、拡張していきます。
 この作業が終わると、重量のある石垣石を積み上げるため、曲がりや節が極力少ない長さ6mほどの杉や松の杭(地杭(じぐい)・面杭(つらぐい))を打ち込み、その上に十露盤(そろばん)(枕木(まくらぎ))と土台(胴木(どうぎ))を井桁(いげた)状に設置します。これは、湿地帯や海上を埋め立てる際に有効な資材と工法であり、江戸城や沿岸部の造成にも使われています。
 石垣石は、伊豆半島産の安山岩(あんざんがん)と凝灰岩(ぎょうかいがん)を調達し、船で築造現場に搬入しました。御台場の石積みには、①布積(ぬのづ)み(石材の積む高さを揃え、目地が横に通るように積む工法)と、②谷積(たにづ)み(四角錐状に加工した石材[間知石(けんちいし)]を傾けて谷ができるよう積み上げていく工法)の2つの積み方がみられます。また、角に当たる隅角部(ぐうかくぶ)には、長辺と短辺を交互に積み上げる算木積(さんぎづみ)の工法が使われています。そして、石積みの最上段にあたる天端(てんば)には、海側に張り出した縁石(ふちいし)(刎出(はねだし))とその崩落を防止する押石(おさえいし)があり、その上に大砲を設置する土塁を築いています。鼠返しを彷彿とさせる天端の形状は、「異人返し」と記された絵図があるように、従来の城郭石垣や石積護岸などには見られないもので、外国人の侵入を防ぐ工夫がなされています。台場公園として一般公開されている第三台場の入口では、こうした石積みを見ることができます(図5-18-4)。
 

図5-18-3 品川台場構造模式図

平成23・24・26年度の品川台場(第五)遺跡の発掘調査の成果を反映したもの。『品川御台場』(品川区立品川歴史館、2017年増補改訂版)

図5-18-4 第三台場東南隅の石垣積みの様子