サービス業としての倉庫リノベーション

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 バブル経済の破綻もあり、そうしたウォーターフロントの「都市のイメージ」は長続きしませんでした。現在の倉庫業者は物流倉庫業を継続しつつ、陸上の不動産業とは異なる港湾倉庫独自の貸床業を模索する段階にあります。それは物資の代わりに定時的なインテリアを呑み込み、吐き出すことでサービス業として港湾倉庫業を全うしようとする試みです。かつてジュリアナ東京があった竹芝橋倉庫は柱スパンやフロアを跨いで意図的にアトランダムにリノベーションされています。これは、個別の企業のビジネス効率を高める空間のケーススタディをパッケージ化し、商品として顧客に提供する本来の役割を終えた港湾倉庫を活用する新しい試みです(図7-8-5①・②)。
 今後、よりさまざまな倉庫建築特有のビジネスが考案されるでしょう。一方で、近年の芝浦などの埋立地には、高層集合住宅や商業施設などの都市施設の建設も進んでいます。これらは港湾用地にそれまでなかった住民層や生活風景をもたらしています。確かに、こうした経済的需要の陸からの侵入は都市インフラとしての港湾とのせめぎ合いをともなうものです。しかし、その相克の過程は湾岸の風景を他には見られない複層的で魅力的なものとすることでしょう。
 そして、芝浦のウォーターフロントがこれからも「都市のイメージ」の発信源となることは明治期の築港計画から一貫して変わってはいないのです。
(渡邊大志)

図7-8-5① Warehouse Market Tokyo 「CONTAINER」
東京倉庫運輸株式会社提供
竹芝橋倉庫改修による空間サービス業の最初のモデルケース。

図7-8-5② 空気のグロッタ
(設計:渡邊大志研究室、撮影:関拓弥) 渡邊大志研究室資料

竹芝橋倉庫地下室を改修した空間。全ての港湾倉庫に共通する埋立地の立地特有の地下の高湿度を解決したモデルケース。