昭和三十七年に「住居表示に関する法律」が施行され、本市においても、昭和四十一年から昭和五十五年にかけて「住居表示」「町名合理化」の両事業を実施いたしました。その結果、町名や町区画が合理化されて便利になった半面、城下町にちなんだ古来の町名が数多く消え去っていきました。
全国各地においても、歴史的に由緒のある町名が次々と失われていったわけでありますが、特に近年、全国的にこの旧町名保存への関心が高まっており、今国会(第百二回国会)においては、「住居表示に関する法律」の一部改正が行われ、「旧町名等の保存措置」等を盛り込んだ条項が新たに加えられました。
本市においては、この「住居表示事業」が一区切りした時点で、その事業実施の概況や懐かしい旧町名や町区画を正確に記録に残し、水戸の町の移り変わりを後世に伝えるため、昭和五十七年の三月に「水戸の町名」を発行いたしました。この本は、幸いにして多くの方々から御好評をいただき、発行後三カ月ほどで売り切れてしまい、その後も購入希望や再版の問い合せが数多く寄せられております。
この度は、これら多くの市民の皆様の御要望に応えるため、「旧町名の保存事業」として、失われた旧町名の標示柱を年次計画をもって現地へ建てることとし、あわせて、この「水戸の町名」の再発行を行うことといたした次第であります。
なお、初版発行後、今日に至る約三カ年間において、本市においても、「大洗鹿島線」の開通や五軒小学校の移転など、様々な変化があり、本書の中の説明や図版等において、現況と一致しないところがたくさん出て参りました。これらについては、できるだけ現況(昭和六十年五月一日現在)に合わせることとし、一部を書き直し(約百三十カ所)、改訂版として発行することといたしました。
この改訂に当っては、初版の編集者「茨城歴史地理の会」代表江原忠昭氏に全面的な御指導と御監修をいただきました。ここに改めて厚く感謝の意を表します。
本書が数多くの人々に愛読され、歴史ある本市の理解を深めるのに役立つよう心から願うものであります。
昭和六十年七月
水戸市長 佐川 一信