新荘三丁目

新屋敷（しんやしき）（梅小路（うめのこうじ）・松小路（まつのこうじ）・楓小路（かえでのこうじ）・柳小路（やなぎのこうじ）・花小路（はなのこうじ）・桜小路（さくらのこうじ）・桃小路（もものこじ）・桐小路（きりのこうじ）・柏小路（かしわのこうじ）・常磐小路（ときわのこうじ））
　新屋敷は、東は栄町二丁目・栄町三丁目、南は北町・砂久保町、西は砂久保町・西原町、北は馬口労町に隣接していた。
　藩政時代、この地は外堀の西側にあって常葉村に属し、北は馬口労町に接し、東は馬口労町片町に連なり、南と西は田畑となっていた。
　寛文六年（一六六六）、水戸藩附家老の中山備前守が下屋敷に接した馬口労町南側のこの地を賜わり、開拓して家士を移したため新屋敷と呼ばれるようになった。その後中山氏が家士と共に多賀郡手綱（高萩市）に移ったため、その後は陸田となっていた。天保七年（一八三六）、藩主斉昭は天保の改革の一環として定府（じょうふ）制を廃止して、江戸在住の家臣に国元帰住を命じた。この時になって再びこの地は武家屋敷とされ、梅・松・紅葉（楓）・柳・花・桜・常磐・柏・桐など九つの小路名をつけて屋敷割が行なわれた。その時の名称の元は、小路の目印に植えられた樹木によったという。「楓軒年録」には、天保七年九月十日の屋敷割について、武家屋敷は、桜小路には一〇軒、常磐小路には五軒、楓小路には六軒、松小路には五軒、梅小路には一軒、花小路には三軒、柳小路には二軒と記されている。
　小路割は新屋敷屋敷割図（市川家所蔵）のように、北西から南東の方向に小路が走り、北側から南側にかけて梅小路・松小路・紅葉小路と三つの小路があり、これに直交するように北東から南西の方向に小路が走り、西側から東側にかけて柳小路・花小路・桜小路・常磐小路と四つの小路が並んでいた。

新屋敷屋敷割図（東京都、市川弘勝氏所蔵）

　それが明治になると、屋敷がどの小路に所属するかはその出入口によって決定され、小路割は町区画割となって整理された。明治六年には新屋敷として第二大区第二小区に、同八年には各十小路が全て第一大区第一小区に、同十七年には上市連合村には、同二十二年には水戸市楓小路などと小路名は町名となった。

明治42年の新屋敷

　柳小路には、明治三十五年田見小路に創立され同三十七年に移転して来た茨城県立水戸商業高等学校があり、柏小路はこの水戸商業高等学校の敷地内で町名はあっても民家は一軒もなかった。楓小路にある市立新荘小学校は、明治三十六年上市尋常小学校の分校舎として創立し、同三十九年本校より独立して上市第二尋常小学校となり、その後新荘小学校となった。また常磐小路には、大正十一年に水戸常磐女学校（明治四十二年に馬口労町に開設した小田木裁縫伝習所が発展した）が開校され、同校は昭和二十三年には常磐女子高等学校となった。桐小路は明治まではほとんどが畑と雑木林であった。
　楓小路など十小路は、昭和四十三年五月に新荘一丁目、新荘二丁目、新荘三丁目、末広町一丁目、栄町一丁目（住居表示による新町名）、栄町二丁目（同）となった。この地には、県立水戸商業高等学校、市立新荘小学校、常磐女子高等学校などがある。また、昭和四十八年まで県立水戸商業高等学校の東角に市立図書館があった。
　昭和七年の市内の学校について、次の表のような統計がある。小学校の就学率が九九・七四パーセントと大変に高く、教育が盛んであったことなどがうかがえる。

茨城県立商業学校