農業――中大野 横須賀平重さん(85歳)
私の家では親父、私、そして息子と代々農業に従事してきましたが、その道のりは平坦ではありませんでした。今のように機械のない時代、作業はすべて手作業、肥料は堆肥。農薬もなかったので稲や麦も病気になりやすく、同じ耕地面積でも現在より収穫量があがらなかったのは当然といえます。だから、副業で年間を通じて縄むしろを作っていました。
私は大正中期から農業をやっていますが、作業に牛馬を使用するようになったのは大正後期。養蚕から野菜づくりに転換したのもこのころでした。
耕運機などの動力機械を導入したのは昭和三十年代になってから。化学肥料もこのころから出回ってきました。そして五十年代、乾燥機を使うようになると、おだかけをする家も少なくなり、昔ながらの農村風景も次第に見られなくなりました。この半世紀の間によくもここまで近代化したものだと、つくづく思います。