前述の調査目的に照して調査地点をB1、B2地点すなわち大串貝塚の南側部分についての範囲の確認に重点を置いた。B1地点については主トレンチとサブトレンチを設定した。サブトレンチはB1地点貝層の東端の確認を目的としたが、貝層は確認されず、土器片のみが包含されていた。主トレンチは幅1.5m、長さ29.5mとし、台地上から低湿地にかけて分層発掘を試みた。台地部分については土砂採掘と投棄によって攪乱が顕著であったが、貝層は斜面部から堆積を始めるためにほとんど損壊を受けていない。住宅建築の際にカットされたために貝層が露出した部分から把握できる堆積層を基準にして分層発掘を実施することにした。カット断面から50cmを自然遺物の構成を析出する鍵層として残し、その他の部分を層位毎に人工遺物および特殊な自然遺物(主として骨類)をとり出し、残りの貝および自然遺物はすべて現地で水洗し、細かな動物および魚類遺存骨を取り出した。また沖積低地の部分についても、どの位の所まで遺物が包含されているかを確認するために可能な限り掘り下げる作業を進めていくことにした。
カット断面に残した50cmのベルト部分については50×50cmの範囲で層別にすべての堆積層を持ち帰り、これを水洗調査して詳細な動物遺存体の種別の同定とその構成を把握することにした。これらの所見については詳細に記すが、大串貝塚は貝塚の形成前にも人々の生業活動の拠点があり、さらに遺物は貝層が切れる沖積低地においてもかなり深く遺物が包含されていることが判明したのである。この中には堅果類なども包含されており、今後の調査の上での重要な留意点の一つとなりうることが判明したのである。