貝層より上位に堆積した各層からは、少量ながら動物遺存体を含む遺物が検出されている。貝層より下位に堆積した層については、トレンチの東側半分についてのみサブトレンチを設定して、第36層までの調査を実施した。貝層との層序関係が不明な第12層を加えて、第7・12~15・20・22~24・28・32層から遺物が検出されている。その他の層からは遺物が検出されておらず、特に砂層については無遺物層と考えることができよう。第32層以外の遺物包含層からは花積下層式土器の破片が出土しており、これらは該期に堆積したと考えられる。第32層からは、縄文時代早期の三戸式土器と貝殻条痕文系土器の破片がそれぞれ1点ずつ検出されているが、これから第32層の堆積時期を決定することは困難である。
第12層は、炭化した植物遺存体を極めて多量に含む黒色泥炭層であり、北側末端部が掘り込みによって破壊されているため、貝層との層序関係を捉えることができなかった。植物遺存体のなかには堅果果実の殻の破片もみとめられる。ここには獸骨の破片も多く、多量に検出された小さな破片のほとんどに焼けた痕跡がみとめられるのに対して、大きな破片にはそれがみとめられないことが特記される。貝層を含めた他の層と比較して、土器・石器・骨角器が多く出土しており、特に石器製作に関わる剥片が多量に検出された。
貝層下の遺物包含層では、第7・13・14層からシカ・イノシシなどの獣骨の大きな破片が数点ずつ検出されており、そのうち第13層のものは直上の第12層に近い位置にあった。第20層からも1点のみではあるが、獸骨の大きな破片が検出されている。第22~24層中には炭化粒と焼土粒が含まれており、特に第24層は、多量の炭化粒が含まれることにより黒褐色を呈する。第28層にはヤマトシジミの貝殻が5点含まれていた。貝殻は白色を呈した脆弱な状態になっている。この層からも少量ながら獸骨の小さな破片が検出されている。なお、15~19区に堆積する第12層以下の遺物包含層を一括する場合は、第Ⅴ層群という呼称を使用する。
基盤となる層が確認できておらず、第36層より下位については、遺物包含層の有無を明らかにし得ない。