第一章 はじめに

 常澄村は茨城県のほぼ中央に位置し,東経140°33′,北緯36°18′にあり,東西約8km,南北約5kmで面積は28.72km2である.地形はほぼ平担で,那珂川と涸沼川に接した水田地帯と内陸部の台地とからなり,大串遺跡はその沖積地に突き出した台地に位置している.
 周辺には国指定史跡大串貝塚をはじめ数々の古墳や遺跡が点在し,古くからこの地域に先人たちが住みついていたと思われる.今回,この大串遺跡をはじめとする大串貝塚周辺一帯を(仮称)「大串貝塚周辺におけるふれあいのまちづくり事業」により,歴史公園として整備する運びとなった訳である.
 計画にあたっては,数千年に亘る歴史を持ち,考古学上有数な史跡でありながら,比較的地味な存在でしかなかった大串貝塚を広くアピールすること,現在失われがちな住民のコミュニティの活性化,レクリェーションの場の提供,住民の健康増進等を図り,「歴史と文化の村,ふれあいの村」としての本村の発展を目標としている.
 概要については,遺跡の保護保全はもとより広い意味での整備を図るために,出土品等の保管・展示,また当地に言い伝わる巨人伝説等歴史的背景の紹介,コミュニティ形成の場としての機能整備等を目的とする歴史資料館(まちづくりセンター)の建設,児童・青少年には健全な運動やサークル活動の場を,老人には憩いの場を与え,スポーツ・レクリェーション等の振興により人間性を培い,村民にうるおいと豊かさを与えることを目的とし,さらに災害時における地域住民の避難場所としての防災機能も備えることを図るものである.
 以上のような事業計画から,整備を実施する上で,周知の遺跡であり貴重な埋蔵文化財が包蔵されていることも予想される同地域の確認調査を実施した次第である.調査は,昭和62年10月に確認した第一次調査区の西側および北側の約3000m2を第一~第三調査区に指定,建設工事により特に掘削破壊される地点を重点に実施した.確認調査は,当初に試掘溝より住居址等を発見し,昭和63年11月25日から平成元年1月21日までの約2カ月に亘って行われた.今回の調査により,古墳時代前期の住居址5軒,古墳1基,縄文時代後期の土壙2基を発掘し,数多くの遺物が出土した.遺構は現状維持保存が困難なため,充分に協議検討を重ねた上で記録保存を図ったが,新たに発見することができた遺構および遺物等,本村の古代からの歴史を知る上で大変有意義であった.また従来より存否が不明であり,発見が期待されていた第三調査区の古墳の存在が明らかにできたことは本当に幸運であった.
                          (常澄村教育委員会)