1 第一号住居址(第五~八図,図版第二・三)


第五図 第一号住居址実測図
 
 規模  北壁のW-X間と南壁のY-Z間は同じ長さで約5.3m,西壁のW-Y間約4.7m,東壁のX-Z間約5.0mを測り,ほぼ方形を呈する.面積は約25m2である.主軸方位N19°W.壁高は30~35cmあり,ほとんど崩落せずに非常に良好な状態で残っている.
 床面  主柱穴間の内側,いわゆる内区に相当する部分は,硬度2であるが,貯蔵穴の周囲を除いた外区は硬度3と思われる.全面的に凹凸がみられて,一般的な床面硬度のありかたに相違する.床面の下は実測図に示すような貼床が施されているが,周溝は認められない.
 ピット  各コーナーを結ぶ対角線上にほぼ等間隔で4本検出され,直径30~35cm,深さ約40~52cmあり,これらのピットは位置と規模から主柱穴と考えられる.
 炉址  P1の東側に位置しており,大きさは東西80cm,南北110cm,中央部の深さ約16cmを測る地床炉である.径1cm位の焼土ブロックが薄く散在する.炉石は存在しない.本炉垣は焼土の堆積状態をみると長期間使用されていないように思われる.

第六図 第一号住居址接合関係図・貯蔵穴・炉址実測図

 貯蔵穴  Yコーナー寄りに長径70cm,短径66cm,深さ92cmのほぼ方形に掘られた大形のピットである.南西隅の確認面下16cmのところから径20×16cm,厚さ15cmの白色砂質粘土塊が出土している.本ピットは貯蔵穴的性格の強いものであろうと思われる.
 埋没土  外区の床面上には,ローム粒子を多量に含んだ軟らかい暗褐色土が堆積し,その上部に黒色土が厚く存在する.内区全体は確認面までほぼこの黒色土一層によって被覆される.
 遺物の出土状態  総数116個の遺物が出土した.種類別の内訳は,土師器108個(炉垣内12個,貯蔵穴内2個),紡錘車1個,管玉2個,鉄鏃2個,炉石破片1個,自然石1個,他に縄文時代の土器破片と石鏃が各1個である.縄文時代の遺物は埋没土に混入していたものであろう.
 土師器の表裏関係は,表49個(45%)+裏52個(48%)+立ち7個(7%)=108個(100%)という比率を示す.この関係は従来のデータに比較すると,非常に類似する数字となり特別に変った傾向は認められない.
 ドットで記録した遺物の平面分布は,中央部の内区にはほとんど散在せずに,大部分の遺物はほぼ外区全体にみられるが,西側は著しく少なくなる.床面またはそれに近いレベルで出土した遺物の中には,甕形土器71・79,壷形土器93,有段口縁壺形土器48,鉢形土器1,高坏形土器39,他,紡錘車76,管玉85・100,刀子28などが含まれる.
 接合資料は,甕形土器に7例と高坏形土器に2例(同一個体の破片を含む)が抽出でき,資料5~7の甕形土器を除くと,すべてが床面から出土した資料である.
 接合資料1〈甕形土器〉 23▽2・24▽0・25▽0(口縁部)
 接合資料2〈  同 〉 18▽0・20▽2 (胴 部)
 接合資料3〈  同 〉 9△2・10△0 (胴 部)
 接合資料4〈  同 〉 17▽0・21▽0 (胴 部)
 接合資料5〈  同 〉 6▽20・12▽0 (胴 部)
 接合資料6〈  同 〉 89▽24・91△31……90▽28・33△23(口頸部)
 接合資料7〈  同 〉 92▽12・60▽22・87▽19・62▽12……77△0・81△11(胴 部)
 接合資料8〈高坏形土器〉 31▽4・37〓0・30▽5・38△0……39△0・97〓0(坏 部)
 接合資料9〈  同  〉 107△0・108△0・104△0・109△0・114△0(脚 部)
 遺物の概要  本址に関係する遺物は,土師器,紡錘車,鉄製品,管玉,炉石などである.
 土師器 器種には甕形土器,壺形土器,有段口縁壺形土器,鉢形土器,高坏形土器などで,坩形土器や坏形土器,また台付甕形土器は存在しない.刷毛目と箆状工具により調整された本土器群は,古墳時代前期の中でも新しい要素が濃厚である.
 紡錘車76 直径45mm,厚さ12mmを測り,中央に径7mmの貫通孔を有する.重量は30gである.
 鉄製品28 小形の造りで刃と茎の境が不明である.形状が多少湾曲するのは使用による研ぎ減りのためであろう.現存長62mm,刃長45mm?,最大刃幅9mm,小形の刃子と思われる.
 管玉85・100 85は長さ33mm,外径13mm,内径4mmを測り,大形太身の完形品である.両側穿孔であり,材質は灰白色を呈する.100は現存長22mm,外径8mm,内径3mmの欠損品で,前者にくらべて小形細身となる.穿孔は両側から行われている.珪岩製.那珂川上流産岩石.
 炉石44 土師器と一緒に投棄された欠損品である.現存長7.5cm(推定全長22.5cm前後),幅7.2cmの砂岩質の細長い自然石である.

第七図 第一号住居址出土遺物実測図(1)

第八図 第一号住居址出土遺物実測図(2)