3 周溝(第二〇図)
大串貝塚B1地点トレンチの調査において貝層から検出された、軟体動物の貝類について報告する(註5)。対象と 第一号土壙の東側約20mの付近は,本台地の東端に当り,急崖を呈して水田(標高3.0~3.5m)に移行するような地形となっている.この台地縁にはかつて古墳らしい墳丘(標高15.5m)が存在していたという話もあるので,第10トレンチを設定して確認を行った.その結果,両トレンチの東端ローム面下に幅3.0~3.5mで方形に巡る深さ約80cmの溝を検出した.溝の内側は,ロームを主体とした黄褐色土が1m近い高さに残存しており,墳丘の一部を形成する土砂と考えられる.
本確認地点(11T)の東南側は,農道があり,さらに常澄中学校のグランドとして削平され,すでにこの建設工事で破壊されていることは確実である.したがって,今回の確認調査は,周溝と思われるコーナー部分の調査に終り,周溝の規模までは残念ながら追求できなかった.
以上の調査結果は,不十分ながらも低い墳丘を積成した小規模の方墳が存在していたことは事実であろう.なお,南側の道路(村道塩ヶ崎小山線)を隔てた台地の南縁,約300mほど離れた地点には長福寺古墳群,西方の稲荷神社の裏山に大串古墳などが散在する.こうした古墳群との関係は今後の課題となるが,おそらくその一部を構成していたように推察される.