2 第八号住居跡

2 第八号住居跡(第六・七図,図版第五・二三)

第六図 第八号住居址実測図
 
 規模  東側の約60%は,道路の側溝と大串貝塚ふれあい公園内に存在し,調査区域外に入り未完掘である.発掘部分の西壁(W-Y間)は3.6m,南壁(Y-Z間)は2.7mまで計測できた.おそらく後述する第一一号住居址に類似した,一辺4.5mの方形または長方形のプランが考えられる.壁はほとんど垂直に近く立ち上がり,高さは50~60cmを測るけれども,壁面の崩落はみられない.
 床面  ほぼ平坦に掘られ,内区は細かい凹凸があり硬度3.外区は硬度2~3に相当する.南壁から西壁に沿って幅10cm,深さ5cm前後の浅い周溝がめぐる.
 ピット・炉址  柱穴はP4(直径20cm,深さ40cm)が検出され,他の3本は調査区外に存在する.炉址も同様であろう.
 埋没土  竪穴内は,断面図A-Bに示すような細分ができ,黒色土(ローム粒子混入)やローム(黒色土・粘土混入)などが廃棄された層相である.人為的埋没土砂.
 遺物の出土状態  小面積にもかかわらず総数110個の土器破片を主とした遺物が発見された.しかし,この平面分布のありかたで竪穴全体を律することはできない.垂直分布を断面のドットで観察すると,確認面から床面までほとんど間断なく散在する.また,個々の接合線は,上下に連結する事例が多く,竪穴内へは土砂の埋め戻しと,ほぼ同時的に棄てられたものである.
 接合資料は,甕形土器に2例認められる.
 遺物の概要  本址出土の遺物は,土師器と球状土製品(土錘)である.土師器の器種には,甕形土器,鉢形土器,坩形土器,高坏形土器などが含まれる.
 甕形土器 接合資料1と23が同一個体である.頸部はくの字状に外反して開き,直線状にのびる囗縁部先端が少し外反する.胴部は球状にふくらんで突出する底部に移行する器形である.刷毛目による調整が施される.
 鉢形土器 68は底部から大きく内湾して開く口縁部である.箆磨きを施している.
 坩形土器 88は直線状に外傾する口縁部の破片であり,刷毛目調整後に箆磨きを施す.33もこの器種であるかもしれない.
 高坏形土器 108は坏部破片で内外面に赤彩を施す.63・67・7は脚部破片,64はハの字状に開く裾部である.内外面に刷毛目痕を残している.
 土錘16 直径25mm,重量20gの球状土製品である.中央に径5mmの貫通孔を有する.

第七図 第八号住居址出土遺物実測図