3 第九号住居址

3 第九号住居址(第八・九・一〇・一一図,図版第五・六・一八)

第八図 第九号住居址実測図
 
 規模  住居址の東側半分がL・E・Cセンター内に入り未発掘である.西壁(W-Y間)の全長は約4.8m,北壁(W-X間)は約3.5mまで確認した.炉址の位置が北壁のほぼ中間であれば,約4.0mの長さになって,形状は隅丸長方形と考えられる.面積は推定約19m2である.壁高は16~20cmを測る.壁面はほとんど垂直に掘り込まれ,崩落していない.
 床面  硬度3に相当する部分は,炉址の南側と南壁寄りの2か所に存在し,それ以外の床面は硬度2~3と考えられる.床面の下には貼床が施される.
 ピット  Yコーナー近くのピット(直径30cm,深さ50cm)を除いては,なぜか柱穴に相当するピットが検出できなかった.住居址の規模から考えても不思議である.
 炉址  北壁に近い床面上にあって南北に長い.直径約130cm,短径は南側で75cm,深さ15~20cmを測る.焼土は北半部と南半部の3か所に堆積する.
 埋没土  黒色土aとローム粒子,焼土を混入した黒褐色土bが堆積し,稀に床面上にロームの小ブロックcが存在する.埋没土は明らかに埋め戻した土砂である.
 遺物の出土状態  ドット・マップに記録した平面分布状態は,北壁寄りとYコーナーの近くの空間に集中して存在し,中央のA-Bセクション付近は僅かに数える程度である.この状態をC-Dセクションの投影図でみると,北側のグループは床面から床上15cmのレベル内に出土し,12例の接合資料の中には,レベル差の小さい資料が多い中にあって,接合資料1・14・16のように8~12cmの差で接合する例もある.Yコーナー付近のものは,すべて床面上の資料で一括廃棄されたものである.
 接合資料は,北側のグループ内に12例,Yコーナー付近に4例,合計16例が抽出できた.
 接合資料1<甕形土器>81△0・79△3・67△5・90▽6・60△3・75▽7……50▽10
 接合資料2< 同 >48△13・49△13・56△13
 接合資料3< 同 >7▽3・8△5・160▽5
 接合資料4< 同 >74△0・148△0(口縁部破片)
 接合資料5< 同 >113△112・114▽14(口縁部破片)
 接合資料6< 同 >69▽4・70▽4・149▽0(胴下部破片)
 接合資料7< 同 >161△5・132△7(胴部破片)
 接合資料8< 同 >162▽5・19△4(胴部破片)
 接合資料9<壷形土器>39▽8・57▽5・61▽6(口縁部破片)
 接合資料10< 同 >40△11・43△10(口縁部破片)
 接合資料11< 同 >97△11・98△12(胴部破片)
 接合資料12<鉢形土器>11△3・12△3
 接合資料13< 同 >133△0・134▽0
 接合資料14<高坏形土器>52△5・82△13
 接合資料15< 同 >20△5・21△3
 接合資料16< 同 >35△12・152△0
 遺物の概要  総数は159個を数える.内訳は,土師器(完形土器を含めて)157個,石製品(管玉)1個,自然石1個である.
 土師器の器種は,甕形土器,台付甕形土器,壷形土器,鉢形土器,高坏形土器,器台形土器,手づくね土器などに分けられる.

第九図 第九号住居址出土遺物実測図(1)

第一〇図 第九号住居址出土遺物実測図(2)
 
 甕形土器 平底と台付の2種類が存在する.接合資料1の器形は,球状にふくらむ胴部から口縁部が外反して開く.底部を欠失しており平底,台付の区別は不明である.口縁部外面になで,胴部上半に刷毛目を施し,下半部は箆削りを行っている.接合資料2・4なども同じような器形の甕であろう.台付甕の接合資料3は,口縁部が外反し,胴部の張りはやや弱くなる.脚台部は斜め外方に直線状にのびる.口径13.5cmの甕に付く台部としてはやや高すぎる.器面の調整は,刷毛目と箆を用いており,一部に輪積痕を残している.105は大型甕の台部で底径14cmを測る.
 壷形土器 口縁部の形状が単口縁と有段口縁のものがある.単口縁の接合資料9・10・146は,口縁部が長めに立ち上がって外反する.胴部に接合する破片がないけれども,多分9のように胴部がふくらみ,底部が突出気味の壷になるだろう.器面の調整は箆と刷毛目による.6は小型の壷で外反する口縁部の下に球状の胴部,上げ底風の底部を付している.器面は箆で滑らかに調整される.90は有段口縁の大型壷で胴部を欠失する.内外面ともに磨滅がみられ,有段部の下端に接合痕を僅かに残す.
 鉢形土器 胴下部を欠損した大型土器が数点存在する.器形は頸部を屈曲させて口縁部が外方に開く.該当する土器は接合資料12・158・163である.前二者の器内外面は刷毛目により調整し,後者は箆と刷毛目を併用している.この種の土器は,第三号住居址出土の接合資料9と同一に考えられる.小型の鉢1は,丸底の底部から胴部が内湾して立ち上がり,口縁部が屈曲して外方に開く.接合資料13は頸部を僅かに屈曲させている.器面は箆磨きを施し平滑である.01は確認面出土の小型鉢で底部を欠失する.

第一一図 第九号住居址出土遺物実測図(3)
 
 高坏形土器 完形品が2例存在し,140は底部から口縁部がゆるやかに内湾して開き,脚部は柱状に長くのび,裾部が屈曲して八の字状に開く.接合資料14の器形は若干相違して,小さな底部から,口縁部が内湾しながら開き,柱状の脚部は中程がふくらみ,裾部は約45°の傾きで直線状に開いている.接合資料15の坏部は,底部に段を形成し,口縁部が外反して開く.脚柱部は07のように柱状を呈するもの,09のように中位から下部にふくらみをもつもの,06のように開くものなどに分けられる.05の坏部破片には赤彩が施されている.器面はすべて箆による調整である.
 器台形土器 83は底部から口縁部が斜めに短く立ち上がる.破片が小さいので断定しえないが器受部に相当する部位と考えられる.
 管玉24 小型で細身の完形品である.長さ15mm弱,直径4mm弱,中央に貫通孔(片側穿孔)がある.石質は那珂川上流産の珪岩が使われている.