5 第一一号住居址

5 第一一号住居址(第一三・一四・一五・一六図,図版第七・八・九・一九・二三)

第一三図 第一一号住居址実測図
 
 規模  北壁と南壁の辺長は,ほぼ同じ長さで約4.5m,西壁と東壁も同様である.面積約20m2の隅丸方形を呈する.確認面からの壁高は23~25cmを測る.ほとんど垂直に掘り込んであり,壁面に崩落はみられない.調査区の中では比較的良好な状態で発見された住居址である.
 床面  硬度は,一般的な床面と著しく相違し,内区と外外に区別できない.硬度3に相当する床面は,北半部についてみると,P1の東側に2か所,P2から東壁に1か所,南半部ではP3の東側に2か所,P4の南と北側に2か所認められ,P1~P4の東側大部分は硬度2~3,同じく西側が硬度2に比定できる.こうした床面の下には,断面図に示すような貼床が施されている.
 ピット  柱穴に該当するピットは,各コーナーを結ぶ対角線上に,ほぼ等間隔で4本検出できた.各柱穴は,直径20~25cm,深さ63~70cmを測る.また,Yコーナー近くの床面には,略円形(直径50cm,深さ52cm)の貯蔵穴と思われる大型のピットが存在する.
 炉址  中央から僅かに東寄りに位置する.東西方向に細長く,直径95cm,短径50cm,焼土は10~14cmの厚さで残る.また,床面が赤変して焼土化した地点が,炉址の南側,中央の東西両壁近くの3か所にみられた.これは炉址と区別して考えるべきであろう.
 埋没土  竪穴内は黒色土aで被覆されるが,所々にローム粒子を混入したbがブロック状に散在する.またZコーナーから炉址にかけての一帯には,廃棄ローム(厚さ10cm前後)の堆積がみられる.

第一四図 第一一号住居址接合関係図
 
 遺物の出土状態  ドット・マップによる平面分布は,中央部に少なく外区全面に散在し,特にZコーナーから炉址にかけての出土量が顕著であるE-Fセクションの両側1m範囲のドットを投影してみると,Zコーナー寄りのグループは,大略出土レベルと接合線の方向が一致して,壁外から投棄されていることがわかる.北壁に近いグループは,東西方向に接合するものが4例,北西-東南方向のものが3例みられる.Yコーナーに近いグループは,別個の接合関係を示す.3グループの廃棄場所と方向は,それぞれ相違していることがうかがわれる.
 土器破片の表裏関係は,表156個(49%)+裏131個(41%)+立ち33個(10%)=320個(100%)という比率である.
 接合資料は,土師器に17例(甕形土器13例,壷形土器2例,高坏形土器2例)と自然石に1例,合計18例が抽出できた.個別の接合資料は紙数の関係で省略する.
 遺物の概要  出土遺物は,土師器,土製品,石製品(管玉)と自然石である.土師器の器種は,甕形土器,壷形土器,坩形土器,鉢形土器,坏形土器,高坏形土器,手づくね土器などが含まれる.

第一五図 第一一号住居址出土遺物実測図(1)
 
 甕形土器 単口縁の平底のものと脚台を付したものが存在する.接合資料1・5は,口縁部がくの字状に外反して開き,頸部内面に稜を残し,胴部は球状にふくらむ.器面に斜めの刷毛調整を施す.接合資料2は,口縁部が直線状に斜め外方に立ち上がる.胴部の刷毛目は斜行する.接合資料13は,脚台部の破片であり,外面に刷毛目調整が施される.接合資料12は小型の台付甕である.頸部から短かく立ち上がる口縁部は,先端が薄くなり,頸部の内面に稜を形成する.胴部は底部に移行するにしたがい小さくなって,弱く外反する脚台が付される.器面の調整は箆と刷毛目を併用する.
 壷形土器 複合口縁と有段口縁の種類が認められる.73は粘土帯を薄く貼付した複合口縁壷の口縁部破片である.接合資料14の口縁部は,頸部から外方に段をなして開く有段口縁の壷で,胴部を欠損している.口縁部に横なでを施し,頸部を箆で調整する.
 坩形土器 140は外傾して開く口縁部,348はくの字状に弱く内湾しながら開く口縁部で,頸部内面に稜を有する.外面に箆磨き,内面に横なでを施す.
 鉢形土器 292は手づくね製と思われる.内面は平滑に調整し,外面全体に磨滅がみられるが,僅かに箆削り痕を残す.底面中央は幾分くぼんでいる.
 坏形土器 291は丸底状の底部から内湾して開く器形である.内面になでを行い,外面は口縁部を除き箆削りにより整形している.
 高坏形土器 接合資料16の口縁部は,底部から内湾気味に大きくひろがり,柱状にのびる脚部は屈曲して外方に開く.器面は箆調整を入念に施す.接合資料17の坏部も前者と同様の器形を呈する.器面の一部に刷毛目痕が残る.坏部と脚部の接合は嵌入式である.146・199の脚部破片も同一型式に属する.
 手づくね土器 279は直径約4cm,高さ2.5cmの大きさである.非常に粗雑なつくりで内外面に指頭痕を残す.

第一六図 第一一号住居址出土遺物実測図(2)
 
 土製品 球状土製品(完形品9個,欠損品1個)と管状土製品(完形品2個)が出土している.
 球状土製品は,直径25~30mmの大きさまであるが,大部分のものは直径30mmを測る.中央に5mmの貫通孔を有する.重量は14~31gまであり24g前後のものが多い.
 管状土製品313・323は,直径20~25mm,長さ約30mm,中央に貫通孔を有する.重量は前者が22g,後者が20gである.
 管玉 完形品が3個出土している.細身の12は,長さ27mm,直径7mm,径2mmの貫通孔がある.85は,長さ42mm,直径10mm,径2~4mmの両側穿孔がみられる.92は,長さ41mm,直径10mm,両側から穿孔されている.
 これらの管玉は那珂川上流産の珪岩に加工を施したものである.