6 第一二号住居址

6 第一二号住居址(第一三図,図版第三)
 規模  北壁(W-X間)約3.5m,南壁(Y-Z間)約3.4m,西壁(W-Y間)約3.6m,東壁(X-Z間)約3.7mの大きさを有する.面積は約12.6m2を有する.形状は隅丸の不整方形である.壁高は確認面から10cm前後を測る.
 床面  踏み固めた形跡はみられず,全面に硬度2の軟らかさである.これは竪穴の廃絶時期と関係するかもしれない.
 ピット・炉址  両者ともに発見できなかった.
 埋没土  ローム粒子を僅かに含んだ黒色土で,人為的に埋め戻された土砂である.
 遺物の出土状態  竪穴の西半部は僅かに数点の破片が発見された程度で,主として東側のA-Bセクション付近に20数個が集中的に散在する.この範囲内の接合資料3例は,それぞれ方向を異にして接合し,相互の接合距離は50cm以内である.このような接合資料を含むドットのありかたを観察すると,投棄実験例と符合する点が多い.ここに散在した破片類は,東側の壁外からほとんど一括的に棄てられたと考えてよい.
 接合資料は3例抽出でき,2例は未接合の同一個体である.
 接合資料1<甕形土器>23▽6・27△4
 接合資料2<坩形土器>22▽10・35▽10
                   ]同一固体
 接合資料3< 同  >19△8・37△0
 遺物の概要 出土遺物は土師器と自然石である.土師器は,ほとんどすべて小破片で出土し,辛うじて6列(確認面1例を加える)の破片が実測できた.
 壷形土器 32は外傾する口縁部の破片で,小型の壷形土器であろう.器面に刷毛目痕を残す.11は壷または甕形土器の底部破片である.
 坩形土器 確認面出土の01と接合資料2・3の口縁部が該当する.大型の器種で口縁部と胴部を欠損している.器面は平滑であって,細かい刷毛目工具により調整される.
 高坏形土器 坏部,脚部と裾部の破片が存在するが,別個体の資料である.15は底部から斜め外方に口縁部が開く.外面は箆による調整が入念に施される.脚部2は棒状を呈し,縱位に箆なでを行っている.24は幾分内湾しながら八の字状に開く裾部である.外面は平滑に調整されているが,内面はやや粗雑になる.

第一七図 第一二号住居址・出土遺物実測図