第一八図 第一四号住居址実測図
規模 北壁と南壁は同じ長さで約5.4m,西壁と束壁も同様に約4.5mを測る.面積約24m2.形状は長方形である.確認面からの壁高は約30cmで,ほとんど垂直に掘り込まれている.
床面 南壁と東壁寄りが硬度3,中央付近から西壁一帯が硬度2~3に相当する.
ピット・炉址 柱穴は存在しない.炉址は北壁近くの中央にあり,長径約86cm,短径約30~40cm,深さ約12cmの地床炉である.焼土の範囲と堆積状態から燃焼部は南側と思われる.
遺物の出土状態 中央から東側の空間は,非常にまばらであって,西側の床面上に多くの遺物が存在する.特に炉址の西側,南西側,Yコーナー付近の3か所が顕著である.ドット・マップとその接合線のありかたは,主として西壁方向から遺物を投棄した事象を物語っており,各グループはほとんど同時的に一括廃棄されたものと考えてもよい.
接合資料は,甕形土器に4例(他に同一個体3例)と壷形土器に2例を抽出できた.
遺物の概要 出土遺物は,土師器,石製品(管玉),使用痕のある自然石(礫器),自然石,混入遺物としては中期縄文土器片などがある.
土師器の器種は,甕形土器,壷形土器,坩形土器,高坏形土器,手づくね土器などに分かれる.
甕形土器 接合資料1は,口縁部がくの字状に屈曲して斜め外方に立ち上がり,大きくふくらむ胴部は,丸底気味の底部に移行する.頸部から胴部に刷毛目調整,底部は箆なでを施す.接合資料2は口縁部から肩部の破片である.単口縁の形状は,頸部から立ち上がって外反する.口縁部に横なで,胴部に刷毛目調整を行っている.小型甕138は,口縁部をくの字状に外反させ,胴部最大径を下方におく.口縁部と頸部はなでを入念に施し,胴部は刷毛目と箆なでを併用して調整するが,一部に輪積痕も残る.底部破片の109・40の2例は,刷毛状工具により整形される.
壷形土器 有段口縁壷の接合資料5は,外反する頸部からさらに口縁部が内湾気味に開く.器面は全体に磨滅している部分が多い.
坩形土器 80は斜め外方に立ち上がる口縁部で,箆磨きを施し,赤彩された小破片もある.17は胴部の破片である.
高坏形土器 口縁部,脚部,裾部の破片が存在する.82は内湾しながら開く口縁部で,一部に刷毛目痕を残す.42・94・86の3例は脚部であり,器形は下方に移行するにしたがいふくらみ,内部は中空となる.裾部177は外反して開き,3はほとんど外反せずに開くように思われる.
手づくね土器 43は口径5.5cm,高さ3cmの大きさを有する.器の内外面に指頭痕を残し粗雑につくられている.底面は無文である.
管玉176 長さ30mm,直径10mm,中央に径3mmの貫通孔(両側穿孔)を有する.完形品.重量5g.那珂川上流産の珪岩を加工したものと思われる.
礫器126 現存長135mm,最大幅55mm,厚さ40mm,重量400gを計測する.上下の両先端部に打欠痕を残す.この手の大きさは長昧のある自然石(安山岩)で,手中に握りしめるに適している.重量的にもたたいたり,うちくだく機能を充分に果たすことができる.
第一九図 第一四号住居址出土遺物実測図